世界各国で流行した現代音楽を聴いてみよう!【世界音楽紹介】
国内で済ます海外旅行、ALISON航空へようこそ!
この記事では私がよく聴く世界各国の現代音楽を紹介していきます。アーティストの簡易的な紹介と、貼ってあるMVの文化的背景をサラりと解説していきます。
2010~2021年代あたりに流行った音楽の中で私が特に好きなものを所感と共に13曲まとめました。テクノ、エレクトロ、ポップ、HIPHOP系が多いです。
コロナ禍で海外旅行出来ない日々が続く中、精神(マインド)だけでも海外旅行した気分になってもらえれば幸いです。
※↓紹介した全楽曲(+α)をまとめたプレイリストです。ご参照ください。↓
※紹介する楽曲の和訳や英訳へのリンクも掲載しています。コピペして翻訳機に突っ込むだけで簡単に内容が“理解(ワカ)“ります。「芸術は読み物」と言いますが、海外のMVにも同じことが言えると思います。つまり、現代音楽とは現代を生きる人々の要請によって生まれ、そこには現代人の抱える様々な悩みや価値観が反映されているので、それらを読み解くことで今の世界の多様性に触れることができ、見聞の拡張が図られます。
ロシア
IC3PEAK - Смерти Больше Нет
IC3PEAK(アイスピーク)はボーカルNastya(アナスタシア)と、プロデューサーKolya(コーリャ)の2人からなる音楽ドュオです。こちらの『Смерти Больше Нет』は現在7200万再生。
カルト的人気を博すアンダーグラウンドのアーティストで、死や鬱をテーマにした“ロシアン・ゴシック・ホラー”な世界観は、その過激さから度々FSB(ロシア公安)と衝突しています。『悲鳴は言語を超えて世界中の人々に届く』というスタンスで、楽曲には悲鳴が多く取り入れられています。
背景の建物はFSB(ロシア公安)本部。歌詞の内容は主に政権批判。「全部燃やせ!全部燃やせ!」がクセになります。クレムリンの下で、こうした表現をするのは並大抵の覚悟では足りません。
『Смерти Больше Нет』の和訳やインタビュー等を翻訳した素晴らしいブログがありました。ご参照ください。
DJ Blyatman & длб - Kamaz
DJ Blyatman(DJブリャットマン)と、Длб(DLB)の楽曲。いわゆる“ゴプニク(ロシア的不良文化)“全開で、ロシアンハードベースの世界を知るのに最適な一曲です。歌詞、ビジュアル、ダンス、私が好きなロシアンミームの全てがこのMVに詰まっています。レーベルに所属せず、自主的にプロモーションや楽曲販売を行う彼らのようなスタイルが最近増えてきました。独特のチープさを強みとして利用している部分に魅力を感じます。
「この曲を水に聴かせたらウォッカになった」との現象が多数報告されています。ご注意ください。
LITTLE BIG – SKIBIDI
LITTLE BIGは2013年頃からロシアで活動している音楽グループです。楽曲、内容の殆どがユーモア方向に振れており、ネタ要素の強いグループですが、このSKIBIDIはなんとYouTubeで5億回以上再生されています。ミームにして流行らせてやろう感が少々鼻につきますが、楽曲の中毒性に疑いの余地はありません。
ユーロビジョンという、世界各国の歌手が生放送で競い合うヨーロッパ版紅白歌合戦のようなものがあるのですが、リトル・ビッグは2020年のロシア代表に選ばれています。ちなみに次回は今年(2021)の5月にインターネットでも配信されるそう。3億人が視聴する番組って凄いですね。
スウェーデン
Salvatore Ganacci - Horse
Salvatore Ganacci(サルバトーレ・ガナッチ)はスウェーデンの音楽プロデューサー、DJ、実業家です。この世界には2種類のヤベーやつが居て、薬をキメてやべー奴と、シラフでやべー奴。サルバトーレ・ガナッチは間違いなく後者です。EDMフェスでの独特なパフォーマンスが度々バズってSNSで流れてきますが、音楽的な実力やプロデュース能力は確かなようで、地元スウェーデンのアーティスト達から絶大な支持を得ています。スウェーデンは音楽教育の水準が世界で最も高く、優秀な音楽家を数多く輩出している事でも知られています。
まるでシュルレアリスム絵画のようなMV。何を表現しようとしているのか見当もつきませんが、繰り返し見るうちに“理解(わか)って”くるでしょう。サルバトーレ・ガナッチ、声に出して読みたい日本語です。
ドイツ
Apache 207 - ROLLER prod. by Lucry & Suena
Apache(アパチェ)207はドイツの謎の多いラッパーです。2019年頃、突如彗星のように現れ、ドイツのチャートで1位を取り現在進行形でヨーロッパを席巻しています。このROLLERは1.1億回以上も再生されています。一目で“理解(わか)る“アパチェ207のカリスマ性、グルービーでどこかユーモラスな彼のスタイルから目が離せません。プロデュース能力の高さが随所に伺えます。
デビュー曲のROLLERですが、歌詞は抽象的で何を伝えたいのかよくわかりません。サビの部分では「アパチェはいつも変わらない」と歌っていますが、そもそもデビュー曲で、まずお前は一体何者なんだ感。コメント欄のドイツ人による「言葉がわからないけど、この曲が大好きです」が笑えます。まさに“ROLLER“です。ダンディな雰囲気を身に纏っていますが何と23歳だそう。肉に塩振るあのおじさんにしか見えません。
オランダ
Murda - Eh Baba
Murda(マーダ)はオランダのラッパーです。この『Eh Baba』は現在約1億再生。トルコにルーツを持ち、ラップもトルコ語で歌われますが、これにはオランダに50万人以上のトルコ系移民が在住しているという背景があります。もちろんオランダのほか、トルコ現地でも絶大な支持を集める実力派ラッパーで、YouTubeにアップしているMVはどれも数千万再生を超えています。トルコ語字幕を出してみると沢山韻を踏んでいるのが分かります。
ベルギー
Stromae - Papaoutai
Stromae(ストロマエ)はベルギーの伝説的なアーティスト、ラッパーです。「ヨーロッパで最も影響力のある28人」に選ばれており、ヨーロッパで彼を知らない人は居ないでしょう。この『Papaoutai』は現在約8億再生。凄まじいです。
ストロマエは2作目のアルバムをリリースした後の2015年、アフリカツアーの為にマラリア予防薬「ラリアム」を摂取したところ、副作用で重篤な精神障害に苦しむようになりました。リリースしている曲数が活動期間に比べ少ないのはこのためです。人気絶頂期であったため、この副作用の問題はヨーロッパで広く知られる事となりました。なお、ラリアムは2021年現在28カ国で禁止されています。
現在7億再生を超えるPapaout’es(パパはどこ?)の曲は、ストロマエが9歳の頃、ルワンダ虐殺に巻き込まれ亡くなってしまった父の事を想い作曲されたそう。マネキンみたいになってるのがストロマエ本人。ヨーロッパではテクノやエレクトロ、EDMが主流な音楽のひとつとしてよく聴かれています。
フランス
OrelSan - La pluie
OrelSan(オレールサン)はフランスで最も成功しているラッパーです。フランスらしい風刺の効いたラップや飾らないユーモラスなキャラクター性が魅力で、ワンパンマンのフランス語版、サイタマ役で声優もしています。
こちらは先ほどのストロマエとのコラボ曲。オレールサンのラブコールで実現しました。奇妙だけどエモーショナルな感じが大好きです。MVには公式で全て和訳が付いていますので設定して見てください。
ストロマエの「il fait beau(いい天気)」のフックが泣けます。ヨーロッパ一部地域は曇りの日が殆どで、オレールサンの自宅は年間40日しか晴れないそう。だけどそんな曇りの日を愛し、「これが俺にとってはいい天気なんだ」と叫ぶ姿に元気づけられます。
Aya Nakamura - Pookie
Aya Nakamuraはフランスの歌手です。本名をアヤ・ダニオコー(Aya Danioko)といい、日本に何かルーツを持つの?と思いますが日本人と血縁があるわけではありません。米ドラマ『Heroes』の登場人物である、マシ・オカ演じるヒロ・ナカムラからインスパイアされたものだそうで、日本への強い関心を公言しています。
主にフランスで活躍していますが、出生地であるマリ共和国や、アフリカ大陸のフランス語圏の人々からも高い支持を得ています。(※アフリカ大陸は半分近くが公用語をフランス語としているので、フランスの音楽がアフリカチャートに入ったり、アフリカの音楽がフランスチャートに入ったりします。)
現在2.8億再生の「Pookie」は「poukave」の略で、フランスの俗語で“スニッチ“を意味しているようです。ちなみに「Pookie」はLil Pump Remix(公式)が存在します(なぜ?)
イタリア
Mahmood, Sfera Ebbasta, Feid - Dorado
Mahmood(マムード)はイタリアの歌手、ラッパーです。2019年には『世界を変える30歳未満30人のイタリア人』にも選出されるなど、現代イタリアでの影響力は絶大です。自身の楽曲をMoroccan pop(モロッカンポップ)と位置付けており、中東の要素が随所に見て取れます。
2019年、当時のイタリア副首相Matteo Salvini氏から「国を分断しようとしている」と名指しで批判されました。Matteo Salvini氏は反移民、反LGBTの政治家として認知されています。
ちなみに最も影響を受けたアーティストはフランク・オーシャンだそうです。日本の漫画作品『犬夜叉』の大ファンでつい最近「Inuyasya(犬夜叉)」という楽曲をリリースしました。
Mahmoodの楽曲の多くが和訳されています。ご参照ください。
トルコ
Canbay & Wolker - Fersah
Canbay&Wolkerはトルコの2人組ラッパーです。2019年にリリースしたFersahは1.2億再生を超えており、現在トルコ語ラップ界隈で最も注目されるアーティストです。ほとんど無名のラッパーが一発で1億再生の楽曲をリリースしたのは恐ろしい才能です。世界中の人々にトルコ語ラップの可能性を見せつけた事でしょう。オランダ編で紹介したMurdaもそうですが、トルコ語ラッパーは何故こんなにも声が良いのでしょうか。抑揚のないお経のようなラップが非常に心地よいです。
また、2019年からはトルコ語ラップ専門誌も刊行されることなり、トルコ語ラップ界隈が非常にホットな模様。トルコ語ラップについては素晴らしい記事を見つけたので↓に掲載しておきます。
シリア
Omar Souleyman - Warni Warni
シリアの生きる伝説、Omar Souleyman(オマル・スレイマン)師の登場です。シリアの民族舞踊であるダブケをエレクトロに進歩させたシリアン・テクノの父であり、代表曲Warni Warniは8000万回再生を記録しています。1996年から500作以上のカセットテープを自身で手売りしており、その情熱は凄まじいです。コメント欄では『オマールおじさん』と親しみを込めて呼ばれています。アップテンポな楽曲を中心に、自身は殆ど姿勢や表情を崩さず歌い上げるのが特徴です。オマールおじさんに言わせれば、ニヤつきながらプレイする西側のDJ達は“ヒヨっ子“と言わざるを得ません。
アメリカの誇り高き国鳥、ハクトウワシに“睨み“を効かせるオマールおじさん。これにはPETA(アメリカのハードコアな動物愛護団体)も激怒。MVでは、無重力状態のオマールおじさんが世界中を巡ります。
南アフリカ
DIE ANTWOORD - 'I FINK U FREEKY'
DIE ANTWOORD(ダイ・アントワード)は南アフリカ、ケープタウン出身のラップグループです。知っている方も多いかもしれません。ラッパーのNinja(ニンジャ)、ボーカルの¥o-Landi Vi$$er(ヨーランディ・ヴィッサー)、DJのGOD(ゴッド)の3人組です。
ニール・ブロムガンプ監督の『チャッピー(2015)』では重要な役どころで出演するなど、世界的にも活躍しています。彼らは自身の活動、表現を『ZEF(ゼフ)』と呼ばれる南アフリカ独自のカウンターカルチャーであると位置付けており、ZEFに基づいた生活を実践しています。現在は拠点をLAに移し、プロデューサー業の方に専念しているそう。
最後に
いかがでしたか?
昨今、翻訳ソフトなどの精度向上によって、海外の楽曲を聴くハードルが大幅に下がりました。世界各国の人々の抱える問題が可視化され、共感する部分もあれば目新しい価値観なども含まれており面白いです。
特に、今の時代はノートパソコン1台あればアーティストとして活動出来るようになったので、ユニークな才能が地球上のあちこちに溢れるようになりました。
コロナ禍で気軽に旅行出来ない日々が続きますが、精神(マインド)だけでも別世界へ飛ばし、ストレスを緩和していきましょう。
この度はALISON航空をご利用頂き誠にありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。
※紹介した全楽曲(+α)をまとめたプレイリストです。ご参照ください。
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