いつもの迷宮
mindgamesという団体が主催しているthe labyrinthというレイヴに、ここ10年くらいほぼ毎年遊びに行っている。屋外パーティー、屋外フェス、のような言葉は雰囲気としてどうも似つかわしくないので、敢えてレイヴと言ってみる。
流れている音楽は主にテクノなどのダンスミュージック。
以前は9月の半ばに開催されていたものが、近年は10月初めの3連休に移動したため、ちょうど先週末に遊んできたところだ。
屋外で開催される音楽イベントのようなものはもともと好きで、キャンプも好きなので、ジャンルを問わず様々遊びに行っていた。
しかしthe labyrinthに行ってからは他にはあまり行かなくなってしまった。名前のとおりまさに"迷宮"で、暫く余韻から抜け出せなくなるほどにこのレイヴは私にとって衝撃だった。
圧倒的なサウンドシステムの良さがまず挙げられるだろう。FUNKTION-ONEというスピーカーを採用しているのだが、これがすこぶる良い。フロアの設計なども良いのだろうと思うが、ひらけた場所でこの音量で、低音も高音もこんなに透明感を持って鳴らす事ができるのか、と感動した。
このレイヴに行きはじめた頃の私はよくクラブに通っていたけれど、パリピというよりはテクノオタクで、レコードを買って家でも聴いていた。
FUNKTION-ONEが欲しくなって調べたら一つ100万円くらいするし、そもそも家ではその音を活かせない。おまけにこのサウンドシステムを導入すれば忽ち迷惑な隣人として追い出されることが目に見えているのに調べた。すみません、あまりに良かったので。
そして会場の雰囲気の良さ。これも圧倒的で、きちんと音に没入できるように設計されていて頭が下がる。
チケットは限定されていて、フロアは混雑しすぎない。朝は爽やかで昼はピースフル。日が落ちる頃には圧倒的なパワーで迫ってきて、毎夜午前2時には音が止まる。
美しく装飾されたフロアは特に夜、余計な灯りが一切なく暗闇からブースが浮かび上がるようになっている。
また雰囲気の良さには客層の良さも含まれる。たまには羽目を外して、というよりは普段から遊び慣れているような人が集まるのはどういう事だろう。DJも自分の出番以外はフロアで楽しそうに遊んでいる。
写真を見せると海外?と問われるほど欧米人が多いのだが、このためにわざわざ来日するのだとしても、その気持ちは理解に難くない。
そして出演者が良い。チケットはDJやタイムテーブルの発表前から段階的に発売されるが、どんどん売り切れていく。発表されても、聞いたことのない名前が並んでいるばかりなこともある。参加者達は主催側に対して、絶大な信頼を寄せているのだ。
こういうものを信じることも信仰と言えるし、広義の宗教のようなものだと思う。考えを理解し、信頼し、この雰囲気をみんなで守っている。聖地巡礼のように年に一度集まっては、解散していく。
近年、主催側が出演予定者と揉めているなどの噂が耳に入ってくるようになった。最近特にそうなのか、もしくは今までもこの雰囲気を守るため強い主張を繰り広げていてそれがSNSなどで拡散されやすくなっただけなのか、真相は分からない。
思わず"宗教はなぜ過激化するのか"なんて調べたりしてしまったのだが、生物は昔から常に自分の居心地の良い縄張りを守るために戦ってきたのだった。
開催前のそんな心配をよそに、実際遊びに行ってみればメインフロアでは白髪のおばあさんまでもが楽しそうに踊っていて、私も倍生きてもこんなふうに遊びたい、この迷宮に今年も戻ってくる事ができて良かった、と心から思った。
あとやっぱりFUNKTION-ONEが欲しい。