【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第三十九話 名前を失った少女
前話
リリアーナは森の奥でしゃがみ込んでいた。頭の中で最後に会った名を呼び泣き叫ぶマルタの姿がぐるぐる回っている。気分まで悪くなってきた。自分の中のアデーレとリリアーナが拮抗する。どちらも引かない。どちらも自分だった。
「私は誰?」
そう小さく呟くと意識を失ってしまった。
※
リリアーナは気付くとアルシャンドールの庵の部屋だった。
「気付いた?」
リリアーナは不思議な表情をする。
「リリアーナ? どうしたの? 気分が悪いの?」
側についていたセイレンが聞く。
「あのう。私、リリアーナていうの?」
セイレンの表情が驚愕に変わる。
「お、お婆ちゃんー!!」
セイレンは転びそうになりながら、アルシャンドールを呼びに行った。
※
「そんな事だろうと思ったよ。二人の自分に挟まれているのは一目瞭然だったからねぇ。アイシャードはその事を突っ込まなかったのかい?」
「おじぃ……ちゃん?」
「そうそう。覚えてるじゃないか。じゃ、私の事は覚えているかい?」
「お……お婆ちゃん?」
「って。それ見た目から?」
セイレンが突っ込むと遠慮がちにリリアーナ、いや、名無しの少女は微かに肯く。
「失礼だね。お婆ちゃんと呼んでいいとはいったが、そこまで老けてないさ」
「あ」
少女が申し訳ないと謝ろうとするとセイレンとアルシャンドールの制止の手が突き出る。
「謝らんでいい」
「謝らなくて良いの!」
きょとん、と少女は見るとすぐにケラケラと笑い出す。
「リリアーナだぁ……」
セイレンが顔を伏せる。
「あなた……。泣いているの?」
伏せた肩が小刻みに震えている。震える声でセイレンが言う。
「ほっとしたんだ。何も変わっていなくて。僕の知っているリリアーナだから」
目の端を拭いながらセイレンは泣き笑いの表情を浮かべる。
「アデーレでもリリアーナでもはたまた違う名前でもいいよ。僕は君さえいてくれればいい」
そう言って少女をふわっと抱きしめる。
「そんな。あなたは王様よ。見えるもの。未来が。でも、変ね。戴冠式なら一人なのに横によくわからない女性がいるわ。ぼやけて見えないけれど」
「君が定まらないからだよ。僕の妻は君しかいないから。リリアーナがお婿さんって抱きついてきたときから好きだった」
「あ……。えと」
「セイレンだよ。違う名前もあるけれど、今はセイレンなんだ。その名前で呼んで」
「セイレン? でいいの?」
「うん。正直に言うとゼフィリスという名前もあるけれど、それは周りのみんながつけて、セイレンは僕が本当に大事な人からもらった名前なんだ。リリアーナもなにか、大切な人から名前をもらったら?」
「じゃ、セイレンとお婆ちゃんに!」
二人は顔を見あわせると無理無理無理、と手を突き出して首を振る。
「兄さんに殴られる!」
「アイシャードに孫を取られたと叩かれる!」
「兄に孫? 祖父がいるの?」
「お勉強のお師匠さんが孫と言ってるんだよ。便宜上言うがリリアーナは賢者の弟子なんだよ。そのお師匠のアイシャードがいたくあんたを気に入ってね。孫ができたと、世界中で宣伝しまくってるんだよ」
「まぁ」
「幸せなんだよ。リリアーナの周りには兄さんからその奥さんから兄さんの友達達も。みんなリリアーナが大切なんだ。新しい名前をもらってもきっとその名前で大事に呼んでくれるよ」
たぶん、と少女は言う。
「アデーレと言って欲しい人は一人なの。周りの人にはリリアーナでいいの。きっと大切な人がくれた名前で私が選んだ人生と思うから」
「いいの? 他に可愛い名前在るよ」
「どんな?」
「シャルロッテとかアンヌとかマリーとかいろんな世界の名前がリリアーナを待っているよ。リリアーナでいいの?」
「うーん。当面はリリアーナであとで決める。しなきゃいけない事があるんでしょ? 兄さんていう人が何かリーダーになってて私はその人を助けるために側にいたと思うの。そこから離れているならきっと私とあなたでしなきゃいけない事があるの」
「おや。そこまでわかるなら、これからまた裏庭に行っておいで。森の奥には行けないように結界を張ってあるから。セイレンも心配する必要はないよ」
「ありがとう。お婆ちゃん。ちょっと、着替えるから覗かないで」
「それ、僕の台詞だよ」
「え?」
「なんでもない」
セイレンが飛び出して行く。
「裏庭で待ってるから!」
その背中を追いかけたくて少女はベッドから転がり落ちそうになる。
「焦らなくてもいい。おまえさんの服はこれだよ」
「ありがとう。お婆ちゃん、……あ」
「お婆ちゃんで良いよ。あんたの祖母役だからね」
「ほんと? ありがとう!」
少女がアルシャンドールに抱きつく。
「じゃ、便宜上、リリアーナでいいかい」
「はい!」
わかった、と言ってアルシャンドールは部屋を出る。女の子の着替えの気遣いだ。本当に暖かく細やかな対応に本当にお婆ちゃんだ、と思いながらまたリリアーナにもどった少女は着替え始めたのだった。
あとがき
リリアーナは強いですなぁ。普通記憶を失ったら半狂乱かだんまりかです。そういや某有名アニメのキャラにリリアーナというのがいたような……。今更ですが。もう40年も前ですが。やっとお風呂に入り、夜活状態です。朝活はムリなのでしょうか。明日は病院と給与引き出しですが、情けない給与に毎回次こそはと思うものの、もうやばい。今週お仕事がないので小説執筆に邁進します。で、あとは漢検の試験と弱点克服。が、昼間できればいいのに、ずるずると寝てしまうモノで。すっきり感がない。あ、サプリ忘れた。飲んでこよう。
しばらく夜活で行こうかしら。朝活あやりウサギは封印? てな訳にはいかないので、いい加減そろそろ寝ます。あともう一話突っ込んでおいて。リアナの話があと少ないので、そちらも埋めないと。割と最後の眠り姫が読まれているのでそれを後にしておきます。
どこかの部分を節約せねば。明日から現金で。とは言いつつ。タクシーがー。アプリでしか呼べない。最近はみんなそれだそうです。DiDiも入れておくか。
来週の火曜日までオールお休み。メガネを受け取りにしか出かける余裕がない。その間に出来ることと言えば漢検と執筆。だけど、ここ二日間ベランダの花を放置しいていたため明日が怖い。枯れてそうで。魚は部屋の中の水槽だから動くのは良いけれど、それでも定期的にはなっていない。かなりイージーな時間帯で食べている子達。あーちゃんの水槽が水が少ないのが少々気になる。夜活で水入れるか明日入れるか。そろそろ眠気が。
明日の朝活の目標に水槽メンテナンスを入れておこう。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
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