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ザワザワしながら今日も読む〜「C線上のアリア」

生まれて初めて「新聞小説」というものをリアルタイムで読んでいる。

湊かなえ・作「C線上のアリア」

読書は好きだが。新聞小説という形式は私には向かない。私は、とにかく読み始めたら、早く結末が知りたいタイプで。内容にもよるが、文庫本くらいなら一晩かけて一気に読破する。

完結までに何巻もかかる長編モノは、我慢できなくて途中でネタバレを探して見ることすらある。ある意味最低の読者である。

ドラマも同じで、連続ドラマは苦手で、リアルタイムでは視聴せずに、年末の一気見でハマることも多い。

唯一の例外は、朝ドラかな。気に入った朝ドラだけは、半年間視聴を続ける。前作の「虎に翼」は面白くて毎朝楽しみだった。

そもそも私は、1年間の長期連載である新聞小説を読み続ける根気に欠けている。しかも、1日に掲載される文字数が少ないので、物語は遅々として進まない。

それでも、今回「ちょっと読んでみよう」と思ったのは、湊かなえさんの作品だったからだ。基本後味の悪い作品は、小説に限らず、ドラマ、映画も含め観ないようにしているのだが。湊さんの作品は、以前よく読んでいた時期がある。

「どんなお話なんだろう?」と軽い気持ちで読み始め、しばらく読み続けてみたが。話の意図がさっぱりわからない。

そもそも、連載に気が付いた時点で、すでに何週間も経っていた。途中から読んでいるから、こんなにもストーリーが理解できないのか? と古新聞を引っ張り出して最初から読んでみた。やっぱり、さっぱりわからない。

ジャンルとしてはミステリーらしいので、何か事件が起こるのかと今か今かと待っていたが。特に何も起こらない。  

小さな違和感みたいなモノはあちこちに散りばめられているのだけれど。わかりやすく犯罪の匂いがする大きな事件は、いつまで経っても起こらない。

私はいったい何を読んでいるのだろう。ミステリーと思って読み始めたのだが。介護メインのお話なのか。それとも嫁姑の確執が主なテーマ? 元カレが出てきたけどそっち?

回想も多くて、あっちこっちに話が飛ぶ。小さな違和感を置き去りにしたまま、突然舞台が変わって話が進んでいくものだから。「あれ。昨日の分、読み忘れていたっけ?」と頭が混乱することも度々。とにかくわからない。わからないから、モヤモヤする。結果、ついつい先が気になって読み続けている。

イヤミスの女王と呼ばれる湊さんの作品だけあって。登場人物は、さすがに嫌な人間ばかりだ。分かりやすく性格が悪く描かれている人はもちろん。語り手である主人公から、どちらかと言うと被害者的な立場にある人に至るまで。誰1人として共感できない。すべての登場人物になぜかイライラしてしまう。  

しかし、この嫌悪感も物語中盤までのわけのわからなさも。たぶんすべて湊先生の計算通りなのだと思う。そう考えると、すごい才能だなと改めて感服する。

ここ数日。ここにきて、物語は大きく動こうとしている。「ようやく来たか!」と思ったものの。まだこれがメインの事件であるとは限らない。

とにかく全く先が読めない。この物語は、いったいどこに着地するのだろう。ちらっと出てきては置き去りにされている違和感の数々は、どう解決していくのだろう。

連載が始まって半年。つまり、まだようやく半分が過ぎたところだ。この先の展開から目が離せない。

ここまできたら、結末を見届けないわけにはいかない。「C線上のアリア」というタイトルにも、きっと何か隠された重大な意味があるに違いない。

登場人物は全員大嫌いだが。ザワザワしながら今日も読む。読み続ける。

残り半年、まだまだ先は長いな……。


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