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由布院の杉本博司 COMICO ART MUSEUM YUFIN
COMICO由布院は2017年にオープンしました。
世界的評価の高い日本人アーティスト作品を常設展示しています。
とりわけ杉本博司と村上隆の作品という世界観が異なる作品を対面展示することが話題となりました。
実は、杉本博司が展示構成に関わってオープンしたのです。
2017年オープン当初の展示
ギャラリー1は村上隆作品、 ギャラリー2には杉本博司の《海景》シリーズをガラス越しに水盤を挟んで、お互いが向かい合う配置になっていました。
オープン前、館側は多くの村上作品を展示しようとしていたそうです。
それを知った杉本は「それだけは、やめた方がいいよ」とアドバイス。
お互いの作品が見える以上、バランスを取るために杉本自身が作品を選び、展示を検討したそうです。
次の引用は杉本博司と隈研吾の対談です。
隈 凄い時間をかけて、杉本さんが現場でセッティングされたと聞きました。
(中略)
杉本 私の方は静謐な空間にしているのに、村上さんの方が単なる倉庫に見えてしまったら台無しですからね。少なくとも共存できるくらいの個体数にする必要がありました。
杉本博司と隈研吾「対談アートと建築の会遇」より
杉本博司の仕掛け
杉本は展示のバランスだけでは無く、仕掛けも施しました。
村上隆《snow moon flower triptych》の月がガラス越しに杉本博司《海景》の海の空の浮かぶ、というものでした。
本当に凄い!
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ガラスに反射した《海景》に月が浮かんで見える
2022年グランドオープンの展示変更
2022年、展示エリアの拡大と同時に展示替えがなされました。
ギャラリー1と2は草間彌生の展示になり、杉本博司はギャラリー4へ、村上隆はギャラリー5へ移動しました。そしてギャラリー3は宮島達夫です。
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《海景》5点と《光学硝子五輪塔》3基
杉本博司の作品
ギャラリー4
《海景》
水平線を撮影する写真家は多い。
「古代人の見た風景を、現代の人間が同じように見ることは可能か。」
哲学的なテーマを含むコンセプトが与えられる事で、普遍的な海の景色が、単なる写真としてではなく現代アートとして海外で高い評価を得ました。
世界中の海がいずれも上下に2分されカッチリとしたミニマルな構図です。
それだけではなく作品の仕上がりも精緻な階調コントロールがされ、高いクオリティを持っています。
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カリブ海、ジャマイカ 1980
杉本さんが最初に撮影した海景
《光学硝子五輪塔》
仏舎利を祀る小さな墳塋はやがて塔となり、日本に至って五輪塔になりました。仏教教典で説かれる世界の構成要素である地、水、火、風、空。
地は方形で表され、水は球形で表される。火は炎の形である三角形、風は半円、空は一瞬を捉えた雫のような宝珠形となっています。
その水の部分である円球はカメラレンズに使用される光学ガラスです。
そこに《海景》が挟み込まれています。
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相模湾、海光 - 2012/2011
杉本さんのウィークエンドマンションから撮影された海の光です
現在のギャラリー1、2の草間彌生は撮影禁止、その他は撮影OKです。
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ギャラリー5
村上隆作品は映え写真撮影を楽しみながら長居するひとが多いイメージ。
杉本博司作品は割りとスルーされ気味でしたが、時々長く佇んでいるひともいました。 同担OKです。
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フラワーボール:鯉/丹頂鶴の朱色 - 2017 (右)
半球のように見えるが実際は平面作品
ギャラリー3
宮島達夫作品
数字は時間を刻むイメージや生きていることをイメージします。
上から降ってくる数字が降水盆に反射して綺麗です。
背景の緑が眩しく感じます。
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ここまでが1階の展示、入口の方へ戻り2階へ上がります。
2階はオープンギャラリーです。
奈良美智、名和晃平、森万里子作品が程よい距離感で見ることができます。
2階のオープンギャラリー
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Your Dog - 2017
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Eternal Ⅰ - 2019-2021
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Ether(lava) - 2021
建築は隈研吾、ロゴデザインは原研哉
個人的感想ですがJR由布院駅の磯崎新建築とイメージが呼応しているように見えて(なぜか)ほっとしました。
黒い焼杉外板が周囲の緑の中で映えてとてもきれいです。
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焼杉の外壁と薄い鋼板葺きの屋根
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竹林の向こうは宿泊施設
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まとめ
由布院にある「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」を杉本博司を軸にしてまとめました。
由布院駅からは徒歩10分ほど、駅から金鱗湖への中間辺りに位置します。
専用駐車場はなく、周辺の有料駐車場を理由することになります。
入館チケットは事前予約が便利です。
時間帯枠に空きがあれば窓口でチケット購入することもできます。