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霊性|小松美羽展 岡本太郎に挑むー霊性とマンダラ(2022)とジパング展(2024)
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「小松美羽展 岡本太郎に挑むー霊性とマンダラ」
2022年に開催されました。
川崎市岡本太郎美術館 2022年6月25日〜8月28日
「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」展
2024年巡回開催中で、小松美羽作品も出展されています。
佐賀県立美術館 2024年8月24日〜10月20日
ひろしま美術館 2024年11月2日〜12月22日
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エントランス風景 2022年
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会場入口 2024年
1984年長野県生まれの小松美羽は、瞑想修行や霊性的な体験を通じて、自然と神々や神獣や人々の祈りなど「見えない何か」にインスピレーションを感じて作品にします。
白装束姿でライブ・ペインティングを行う姿は巫女的であり呪術師的であり神懸かりの様子を連想させます。
小松自身も決してパフォーマンスではなく「神事」であると言います。
神事であれば、本来は隠されて行われる儀式を目撃出来るという有り難さがあり、アート視点では制作過程を目の当たりに出来る訳である。
もともと祈りとアートはほぼ同質なものがあるのだろう、というような事を思わせてくれます。
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この展示には故郷の長野県で採れる黒曜石がモチーフにされていました。長野の黒曜石は縄文時代には矢尻やナイフに加工されていた当時のブランド品でした。
このように土地に記憶や痕跡など場所や空間からアーティストは霊性を得るのでしょう。
「霊性」展といえば、近年ほぼ登場する安藤礼二はこの展示図録にも寄稿しています。
霊性としてのマンダラ、マンダラとしての霊性は人類の表現の未来を切り拓き、人類の根源にして人類の普遍を切り拓く。小松美羽は、いまマンダラを描き直し、黒曜石をその中心に置き、無限の可能性をそのなかに秘めた胎児としての生命、あらゆる動物の可能性、神獣の可能性、精霊の可能性を秘めた生きた神話を、その作品として定着されようとしている。
図録 2022年 安藤礼二
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2022年
小松美羽は、かつて美しすぎる画家などと呼ばれて、私は少し残念に感じたました。なぜなら本質的では無いしこういう売り出し方には反感を持つひとが多いからです。ただご本人が望んだ事では無いようなのが良かったです。
作風には好き嫌いが別れるところでしょう。絵葉書のように美しい風景が大好きという方はいるもので、こういう雰囲気はちょっと・・・という方もあるでしょう。それらは否定されるものではありません。
小松は自著で妹に言われた言葉を紹介しています。
「お姉ちゃん、絵が変わったんだよ。昔のお姉ちゃんの絵は、『みんなに知ってもらいたい』とか、自分を出すエゴみたいなところがあったけど、今は違う。お姉ちゃんの絵を見ていると、神社にきているみたいな感じがする」
私にとっては、最高のほめ言葉だった。
ダイヤモンド社 2018年
作家自身の内面や精神世界を表現したいのか、そうではないのか、これは大切だと私は思っています。
「神社のようなアート」を目指す事を意識した小松は、出雲大社で描き、その後は金剛峯寺や東寺や善光寺、名だたる寺社でライブペインティングを行い作品を奉納するようになっています。
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「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」展
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ともに2024年
ジパング展(佐賀)にて
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2022
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小松美羽の描く世界は、彼女の想像の風景でしょうか、それとも何かを超越して視えたものでしょうか。
いずれにしても、これから精進してさらに進化していくだろう作品に注視しています。