月間ルーマニア誌3月号ー2021

読者の皆様こんにちは。

外も暖かくなり、春の訪れを感じられる3月がやってきた...と、いいたいところだが、今年のルーマニアの三月はなかなか寒かった。どれくらい寒かったかというと、12月、1月、2月、いわゆる冬の期間ではほぼ降らなかった雪が(特にブカレストでは)、あたかも3月が冬を意味するかのように、たくさん降ったのだ。そして、積もった。個人的な話ではあるが、妹と雪で遊べたのは去年ぶりだった程だ。しかし、全く予想だにしてなかった寒波は去り、ルーマニアには春がやってきた。少なくともここ二日は普通に暖かかった。まるで、パニックの終焉を象徴するかのように、平凡な三月が戻ってきたのだ。

だがしかし、現実は、コロナの状況は悪化し、平凡な日々からは遠くかけ離れている。

こんな状況化だからこそ、人々は普通の日常を欲し、非常に危険な行動に出ることがある。ブカレストの一部のクラブでは、違法であるのに、営業が秘密裏に開始されてたという。そして、沢山の人々がそういうイベントにいった。彼らは若いがゆえにただ楽しみたかったのか、それとも、コロナは存在しないとは狂信している陰謀論者なのかはわからないが、擁護のできる決断ではない。下の画像は、あるクラブの入り口に掲示されていたポスターである。「お客様、私たちの安全面を考慮し、今夜はフェイスブックやインスタグラムに写真を投稿しないようにお願いします」。冗談なら、なかなか皮肉のきいたブラックジョークだと思う。しかし、ジョークではない。

画像1

さて、ルーマニア、特にブカレストは、違法営業を開始できるほど元気なのだろうか?

答えはNOだ。

ブカレストは、過去14日間、1000人あたりで6.88人がコロナに感染している。ブカレストの周りをきれいに囲むイルフォヴなんかは、1000人あたり8.33人だ。少し前までは、1000人当たり6人を超えた県は完全なる都市封鎖をすると断言してたほどだから、異常な状況であるのは一目でわかるだろう。下の画像をみれば、ルーマニア全体で見ても、感染者が急増しているのがわかる。感染者がある程度減ったとき、大幅な制限のカットをしたせいで、新規感染者が毎日増える状況になっている。しかし、首都ブカレストで首都封鎖は行われないことになった。金土日、夜8時以降の外出禁止、夜6時以降の営業禁止になったが。

画像2

では、何故、先ほど明記したように、ルーマニアの政治的指導者は、明言したとおりに大幅なロックダウンをしないのか(1000人当たり6人以上が感染している県で)?恐らく、答えはシンプルだ。経済的なダメージが怖いこと、失業者が急増し、デモンストレーション活動につながる可能性がること(そしたら、人々が密集してしまうため元も子もなくなる)、失業者以外にも、反ロックダウンデモが起こりうること。以上を踏まえて、慎重にならざるを得ないのだろう。

3月24日時点で、ルーマニアのICUに入院している人数は1351人であり、それはつまり、あと77人分のスペースしかICUに残されていないことを意味する。経済と医療体制。どちらも大事だ。うまく、バランスをとることは可能なのであろうか?これからの政治家達の決断が見どころである。

デモ活動といえば、3月27日ブカレストで、地下鉄の労働者組合が大規模な、そして極めて悪質なストライキを起こした。何故大規模なのか?地下鉄網が一日中ストップしたから。なぜ悪質なのか?まず、ルーマニアは今非常事態宣言下であり、そもそも人々が密集することになるストライキは違法だ。さらに、人々の交通手段である地下鉄網を停止させ、バスやトラムの使用者を劇的に増やすことになるので、こういった交通手段は国の厳重な指導の下、運用せねばならない。よって、交通手段を停止させる行動を起こすのは違法だ。そしてさらに、このストライキは秘密裏に実行された。朝、人々が地下鉄に乗ろうとし、扉が閉まっているのを確認するまでは、誰もストライキが起こされることは知らなかった。下の画像の張り紙にはこう記されている、「突発的なデモ活動。迷惑をおかけして申し訳ない」。では、どうして迷惑をかけなきゃいけない行動に出たのか?一見すると、労働者が自分たちの扱いを不当におもい、労働環境の改善のために実施したものと思うかもしれない。しかし、それは違う。

画像3

画像4

まず、国営であるはずのMetrorex、ブカレストの地下鉄運営会社の給料を見てみよう。Salariu mediu brut national (RON)と書いている場所が、ルーマニアの平均的な手元に届く給料だ。そしてSalariu Mediu Brut/Angajat Metrorexと書いてある場所には、地下鉄職員の平均給料が明記されている。どの年のデータを見ても、普遍的な平均給料の2倍であることがわかる。労働環境はとてもよいことがわかる。

画像5

では、何に対するデモ活動なのか?元PSD(社会民主党)の元議員、イオン・ラドイが労働組合のトップである。地下鉄構内の店が払う使用料の約7割は彼の手元に入る仕組みになっている。地下鉄運営会社としては、お店の存在は意味がない。大した利益にならないからだ。それなら、人々のスペースを確保し、空いた場所にコマーシャルを掲示するほうが、全然理にかなっている。その状況を受け、新しい運営会社の指導者層は、お店の撤廃を発表。そして、突発的なストライキだ。もちろん、彼自身、ストライキとお店撤廃の因果関係を否定しているが、労働環境がルーマニアでもトップレベルの職場の職員が(大企業に勤めるより、沢山の人がMetrorexへの就職を希望する)、何のためにストライキしたというのだ?一説では年間15万レイ(役00万円)の労働組合トップの収入源を守るために、誠実な部下たちが行動を起こさせられたと考えるほうが合理的だ。実際、ストライキは非常に危険な状況を生んだ。バスやトラムの運営会社は即急に対応し、バスやトラムの量を増やしたが、それでもいつもにも増す混雑は回避できなかった。ブカレスト市の住民を、実質的に人質にしたのだ。もちろん、労働組合のトップに対しては、刑事裁判が開かれることが決定。個人的には逮捕案件だと思う。

さて、暗い話題が多かったが、先月同様、ルーマニアでのワクチン接種率はとても良いものだ。3月27日時点で、約286万人がワクチン接種。人口1940万人程度の国であるため、1割以上が接種したことにある。一日約6万人接種できる状態である。そして、ワクチンの量はこれからも増えていく予定だ。3月15日からは、医療従事者や高齢者だけでなく、その他の人々へのワクチン接種も開始された。私自身、すでにワクチン接種の希望を伝えた。数日のうちに予約が完了するはずだ。

コロナ感染者数は増えているため、ネガティヴなニュースばかりだが、コロナに対抗し得る唯一の手段であるワクチン接種がしっかり進んでいるのは非常に喜ばしいことだ。

さて、最近はテレビを開いても、ネット除いても、外を出歩いてもコロナコロナコロナと、コロナの話題であふれかえっているのは世界共通だろう。しかし、それはストレスフルだ。なので、コロナの話は、今月号ではこれで以上だ。

最後に、政治のニュースとスポーツのニュースをお届けしたいと思う。

まず政治だ。右派政党AUR(ルーマニア統一連合)の国会議員が、国会議事堂で、USR(ルーマニアを救え!連合)の国会議員を罵倒する珍事件?がおきた。これらはダン・タナサAUR議員の発言である。”Nu ți-e rușine mă măgarule să vii amenințător spre mine? Că ce mă păduche? Dispari de aici, păduche, nu auzi ce spun? Îți ordon să dispari din fața mea, sa faci pași. Nu mai strica aerul.”(ロバごときが俺に向かって威嚇するんじゃねえ、この恥さらし。シラミ野郎が。俺の目の前から失せろ、シラミ野郎、聞こえねえのか?さっさと俺の前から消え失せろ、命令だ。お前のせいで空気が汚れる)。何故こういう発言をしたのか?USRの議員は、ダン・タナサ議員の言い分に反論しただけだ。先月号で紹介したショショアカ同様、こういう風にしか対応できないのだろう。実際彼らが国会に選ばれたのが、こういったドラマチックな行動が一部の層に人気を醸したからであり、何ら不思議ではないが。

最後の最後にスポーツだ。

日本では日韓戦が、親善試合ではあったが、話題になったように、ルーマニアでも宿敵とのサッカーの試合が3月27日にあった。ハンガリー戦だ。U21の欧州大会への予選であたった。個人的に審判には不満しかないが、2-1でルーマニアの若者たちが勝利!非常にきもちいい!激熱だ!以上!(笑)

画像6


いいなと思ったら応援しよう!