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【育児の思い出】市民プール事件
概ね問題なく大人になってくれたと思う我が家の3姉弟だが、
タイトルをつけるとしたら『〇〇事件』と呼びたくなるような出来事はいくつかある。
大抵は我が家にお金がない事とか
私が体を悪くして外に出られない事が原因だと思うのだが、
このプールの件に関しては何とも言えない
『どうしたら良かったのかな』
『無事で何よりなんだけど、なんだかなぁ』と
今でも釈然としない出来事だ。
長男が小6の頃だっただろうか、
友人と遠くにあるプールに行くと言って出かけて行った。
お小遣いの範囲内で行けるという事だったし、JRの駅で10個分もあるが、道程は単純で迷うこともないし、過保護にしてもなんだしな、
と思い、ちょっと心配だったが行かせることにした。
プールは公営で安い所だし交通費を合わせてもなんとか行けそうかなと考えていたのだが、
我が家の長男とこの友人、
『混ぜたら危険』な組み合わせだったようだ。
夕方、そろそろ帰って来るかなと思った17時ごろ家に電話がかかって来て、
帰りの電車賃がないから歩いて帰るという。
『はい?』としか言葉が出て来なくて
口がパクパクした。
だってこれ何キロある?
ほとんど市の端から端まで歩くんだよ?
いやいや考えられない。
友人はもう歩き始めてるからついて行くと言って電話を切ろうとする。
当時は携帯電話を持たせていなかったので、
この電話を切ってしまったら、もはや半分行方不明になってしまうのと同じようなもので、
警察沙汰確定である。
電車に乗って帰るならともかく、歩くとなると一本道なわけもなく、道に迷うのは必至だ。
慌てて『お父さんがその駅まで行くからそれまでどんなに遅くなってもベンチで2人で待ってなさい。』と言い含めた。
友人は『そんな迷惑はかけられません』などと言っていたが、
『これは迷惑という類の話ではないから』と電車で迎えに行くまでなんとか待っているように
説得した。
この時、夫が叱りつけるのは目に見えていたので、こちらにも『今回は無事に連れて帰るだけ、くれぐれも余計な説教はしないように』と釘を刺した。
私がその駅まで迎えに行くのは不可能な状態だったので、この時もたまたま夫が家にいて大変助かったのだが、長男が言いつけ通りちゃんと待っているのか、そして夫が長男の言い訳に対して激昂しないか、その両方でその時の私は本当に生きた心地がしなかった。
夫がその駅に着くと、うちの長男はベンチにいたが、友人は『やっぱりオレ歩いて帰る』と行ってしまったらしいのだ。
長男だけでもいてくれて助かったが、
その友人だって家までの距離は20キロ以上あるはずだ。
しかも普段から歩き慣れている道ではないと思われ、心配でいてもたってもいられなかった。
長男と夫が帰宅してからその友人の家に電話を入れると、そこのお父さんは
『うちの息子は行動派でなんでもやり遂げるから大丈夫です。お構いなく。』
などと言っていて、その時点ではもう19時になっていたが、携帯電話もなしで今頃どこにいるかもわからない状態である事はあまり気にしていないようだった。
我が家は車を所有しておらず探しに行くことも出来なかったため、そのお宅の方針に任せる事にした。
帰りの電車賃がなくなった原因を改めて聞くと、2人とも元々お金をあまり持っていないのにも関わらずお菓子を買って食べてしまい、
行きの駅で既に帰りの電車賃はなかったのだ。それなのに出かけてしまうというのは、
何というか、呆れ果てて言葉が出なくなってしまった。
距離感がまだわからなかったのかもしれないがホントに勘弁してほしい。
しかし、まぁ一件落着という事で子供達も寝静まった頃に、その友人のお父さんから電話がかかって来た。
『息子が帰らないんですけど』と、どうしてくれるんだという感じで言う。
『だから言ったじゃないの。あなたお構いなくって言ったよね?』と言いたくなるくらいの雰囲気だったが、
こちらとしてもどうしようもなく、双方無言になった所でちょうどその子が帰宅した。
距離的にもこの時間になるのは少し遅すぎで、やはり暗くなって道に迷ったらしい。
冒険心旺盛で、ご家庭でもそれを奨励しているのかもしれないが事件や事故に繋がりかねず、更に若干責任を押し付けられた格好となり、
なんとも釈然としない一件であった。
我が家の長男も、突拍子もないことをしでかす事もある上に断れない性格で、結果的に友人を
危険に晒してしまったなと反省している。
これはまだ携帯電話を持つのがさほど当たり前ではなかった頃の、3人の育児の中でも
なかなかの肝を冷やす事件である。