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【育児の思い出】情熱家か不審者か

2001年。
春の陽気が気持ちいい3月のある日。
長女の幼稚園の卒園式当日の話だ。

当時は子供の行事に夫が来るという事はなく、
(夫の名誉のために言うと別に子供に興味がない人というわけではない)
いつもと変わらず姉弟3人を連れて幼稚園に出発した。

いつもと違うのは私がほんの少し綺麗な服を着て、ほんの少し高いヒールの靴を履いていた事くらいだ。

卒園式にはほとんどが下の子を実家に預けたりあるいは両親揃って参加しているご家庭ばかりで、我が家のように1人で下の子を2人も連れて来ているおうちなど他になく、
皆さん感動の涙を流しながら式典に参加している中で、私は馬鹿みたいに
園庭で走り回る弟2人(長男もここの園児なため我が物顔で遊ぶ)を追いかけていて会場には一歩も入れず仕舞い。

こうして、娘が卒園証書をいただくシーンも
歌を歌う感動的なシーンも何も見ることなく、
ただ下の子を園庭で遊ばせるためだけに来たかのような娘の卒園式は終了した。

まぁこれらは想定内。ママ友が写真を撮ってくれていて、後からくれたのでいいのだ。

ところで、
少し小さく感じられるようになったベビーカーに2歳の次男を乗せて、
上の2人は走り出さないようにベビーカーの両脇に掴まらせながら3人並んで歩くのがいつもの我が家のルールだ。

この日も幼稚園の制服姿の2人を従えて、普段と変わらず約30分の道のりをのんびりベビーカーを押しながら歩いて帰宅した。

すると家まで少しのところで、背後から
『コニチワ』と声をかけられた。
振り返ると南アジアのご出身と見受けられる作業着姿の若い男性がニコニコして立っていた。

この辺で工事のお仕事をしているのかな、と思いながら私も『こんにちは』とにこやかに返した。

すると
『オクサン、カワイイ。オクサン、ステキネ。』と言う。

どういう意味なのかもわからないが、
外国の方が褒める時には謙遜しないでお礼を言った方がよいのかと咄嗟に思ったので、
『ありがとうございます』と
またなるべくにこやかに返事した。

特に用もなさそうだったので
『では、失礼します』と歩き出すと、
なんとさっきのセリフを繰り返しながらついてくるではないか。

ご厚意で言ってくれてるだけかもしれないし
失礼な事もしたくない。

でも率直に言って、すごく怖い。

自分1人ならともかく、園児2人を連れて
さらにベビーカーに1人乗せている。

これ、ものすごく怖い。

しかもいつもと違う服と靴を着用していて動きづらい。

子供がいるので早歩きもできないままノロノロと歩き続け、
その人もノロノロとあのセリフと共にいつまでもついてくる。

声が聞こえなくなっても後ろを振り返るのが怖くなってしまって、
マンションをわざと通り過ぎてから振り返り、その人がいなくなった事を確かめて再び家を目指してできる限り急いでもと来た道を戻った。

結局目的も分からず、怖い人だったのかも不明だが、子供連れだと本当に怖いな、気を抜けないな、と改めて思い知らされた。

全く感動的な事もない、
ズレた卒園式の思い出だ。

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