花相の読書紀行№.109『髪結い伊三次捕物余話 さんだらぼっち・黒く塗れ』
人情が生きる江戸のまち、時代劇ミステリー
【髪結い伊三次捕物余話 さんだらぼっち・黒く塗れ】/宇佐江 真理
<あらすじ>
第4作 さんだらぼっち
ついに念願の夫婦となった二人。深川の芸者をやめたお文は、廻り髪結い・伊三次の長屋で女房暮らしを始めるが、どこか気持ちが心許ない。そんな時、お文の顔見知りの子供が犠牲になるむごい事件が起きて──(表題作)。
掏摸(すり)の直次郎は恋に落ちて、悪道から足を洗う決心をする(「ほがらほがらと照る陽射し」)。
伊三次には弟子ができて、お文の中にも新しい命が宿る(「時雨てよ」)。
江戸の季節とともに人々の生活も遷り変わる。人気捕物帖シリーズ第四弾!〔紀伊国屋書店サイトより〕
第5作 黒く塗れ
伊三次が小者をつとめる町方同心の不破友之進と妻のいなみに、待望の女の子が誕生する(「蓮華往生」)。
一方、伊三次の女房・お文も出産を間近に控えていた。だが、お文の子は逆子(さかご)。伊三次は不安を抱きながらも、人斬り請け負いの下手人を捕らえるために奔走する(「月に霞はどでごんす」)。
惚れたお佐和のために掏摸(すり)から足を洗った直次郎のその後を描く「慈雨」など、伊三次を巡る全ての人々の幸せを願わずにいられない、人気シリーズ第五弾!
(紀伊国屋書店サイトより〕
★感想
作家“宇江佐真理”さんのデビュー作が、1997年にオール讀物新人賞を受賞した『髪結い伊三次捕物余話ー幻の声』、ここからシリーズが始まり、今回完読したのが、第4作と5作です。
主人公は、廻り髪結いを営む“伊三次”。
髪結いをしながら北町奉行所定廻り同心の“不破友之助”の小者として活躍する物語は、捕物だけではなく、伊三次が惚れた深川芸者の“お文”との日常と関わる人々の姿を描いています。
どちらかと言うと、江戸で暮らす人々の姿を季節を通して語っている作品なのではないかと思っています。
本作でやっと夫婦になった“伊三次”と“お文”の行く末と、不破の息子“龍之介”の成長など、登場人物たちの暮らしをワクワクしながら読みました。
第4作の表題“さんだらぼっち”は、何とも遣る瀬無いお話し…。
でも、どんな逆光に逢っても、江戸町の人情が人を支えてくれている…そんなストーリーが心に沁みます。
ちなみに“さんだらぼっち”とは、俵の両側に付けられた藁で編んだ円い蓋のことだそうです。
人情み溢れる時代小説ミステリー♪
連作短編集は、ちょっとの合間に読めるから良いですね。
追伸、このシリーズを最後まで書き終えずに他界されました宇江佐さんのご冥福をお祈りします。
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