花相の読書紀行№.56『狐花火 羽州ぼろ鳶組』
死してなお恩義を忘れず
【狐花火 羽州ぼろ鳶組】/今井翔吾
<あらすじ>
天才花火師と謳われるも、愛娘を花火の事故で喪い、妻も世を儚み命を絶つ――。明和の大火下手人秀助は、事故の原因たる怠惰な火消に復讐を誓い、江戸を焼いた。二年前、新庄藩火消頭松永源吾と対決の末捕えられ、火刑となったはずだが、朱土竜、瓦斯と、秀助と思しき火付けが今再び起きる! 秀助は生きているのか? 江戸の火消が再び結集し、猛り狂う炎に挑む。
★感想
今井翔吾さんの羽州ぼろ鳶組シリーズの第7弾。
第1作の「火喰鳥」に登場した天才花火師“狐火の秀助”の面影を追いながら、次々起こる火付けを追う松永源吾と火消たちの活躍に今回も満点の評価です。
各章の節目節目に、秀助が逃亡中にかかわった火消や子共から受けた恩情によって、人の心を取り戻していく様が描かれています。
また文章のそこかしこに源吾の秀助に対する思いが切なく綴られ、そして“源吾”最大の危機において命を救ったのも“秀助”という設定が、さすが今井翔吾さんです。
ラストの“終章”では、人の優しさが心にゆっくりと広がり、秀助の心を思いながら読み終えました。