花相の読書紀行№.138『騙る』
貴方は大丈夫? 騙されていませんか?
【騙る】/黒川 博行
<あらすじ>
大物彫刻家が遺した縮小模型、素人の蔵に眠っていた重文級の屏風、デッドストックのヴィンテージ・アロハ……。
こいつは金になる――。
古美術業界の掘り出し物にたかる、欲深き人びと。
だましだまされ、最後に笑うのは誰?
著者の十八番、傑作美術ミステリー連作集!
彫刻の縮小模型、蔵に眠っていた屏風、デッドストックのアロハ…こいつは金になる―。だましだまされ、最後に笑うのは誰?著者の十八番、傑作美術ミステリー!価値を知らない素人に、親切を装って作品を売りさばく段取りをつけるが―「マケット」。阿漕なホストに画廊勤務の経験があると知り、美術品を使って罠を仕掛ける―「上代裂」。技術の粋を集めてヴィンテージ・アロハの精巧な偽物を作るが―「ヒタチヤ ロイヤル」。資産家に偽物を掴ませた悪徳業者を懲らしめようと、ある策略をめぐらす―「乾隆御墨」。素人の蔵から重文級の屏風絵が出た。安く買いたたこうと芝居を打つが―「栖芳写し」。財荒難に陥った美術館が極秘に青銅器のコレクションを売るという―「鴬文六花形盒子」。
◆目次◆
・マーケット
・上代裂
・ヒタチヤ ロイヤル
・乾隆御墨(けんりゅうぎょぼく)
・栖芳写し
・鶯文六花形盒子(うぐいすもんろつかがたごうす)
★感想
古美術そのものは全く縁がない私でも、その手口についつい引き込まれ、楽しく読めました。
美術年報社の“佐保”が軸となって進むストーリーは、関西弁の心地よさと、何とも人情味のある詐欺のお話し6編。
表題を“騙す(だます)”では無く“騙る(かたる)”としているところも、良いです。
推理する醍醐味は無いですが、文章の読みやすさと構成の良いミステリーで、まるでオムニバスドラマを見ているように楽しめます。
今回は騙し騙されの世界を堪能しましたが、私はと言うと‥‥
人生もここまで生きてると、怪しいものには“手を出さない”“耳を貸さない”が信条になっている。つまりは冒険をしなくなると言うことかも知れないです。
私個人は、どちらかと言うと騙される側の方が良いなぁ~。
でもやっぱり騙されれば、悔しいし、腹が立つのは仕方がないですけどね。
こんな風に騙されてはいけないという教本、是非読んでみて下さい。