花相の読書紀行№.53『続 御書物同心日記』
書物同心は本が好き
【続 御書物同心日記】/出久根達郎
<あらすじ>
極彩色の春画には秘密が隠されていた!
嫁入り道具の絵巻物を担保に、大名家が古本屋に金を借りにきた。目利きを頼まれた御書物同心の丈太郎は、極彩色の春画にうろたえる。一方、将軍家の書物を管理する御文庫では将軍遺愛の本が紛失した。書名を聞いた途端、丈太郎は驚愕する。そして「事件」は意外な展開をみせた・・・。江戸情緒あふれる連作集。
・第一話 目 録
・第二話 秘 画
・第三話 袖 珍
・第四話 素 麺
・第五話 松 茸
・第六話 土 蔵
・第七話 蓮 実
・百二十一年目の大事件 文庫版あとがきにかえて
★感想
“紅葉山文庫”と言うのは、江戸時代に紅葉山に設けられた将軍の図書館。
その書物の大部分は明治政府に引き継がれ内閣文庫となり、現在も内閣府所管の国立公文書館が所蔵しているそうです。
紅葉山文庫の歴史は、220年以上も続き、その管理を任されたのが書物奉行の同心たちです。
そのお役目について間もない同心“東雲丈太郎”が古本に纏わる事件を解決していきます。
とくに目立つこともなく、およそ控えめな性格の主人公、実は頭脳明晰な江戸のコロンボ。
周辺をとりまく町民や同僚たちは人増溢れる江戸っ子たち、悪人でさえも何故か憎めない。
日常のちょっとした出来事は、派手な活劇もないけれど、江戸風情を感じさせながら進むストーリーで、優しい結末が心地よいです。
最後の章には、実際に紅葉山御文庫で起きた事件を紹介しています。
読んでいて味のある小説って、良いですね。
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