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花相の読書紀行№.77『インフォデミック- 巡査長・真行寺弘道』

情報に感染し、人は動かされる

【インフォデミック-巡査長・真行寺弘道】/榎本憲男
<あらすじ>
2020年春、新型コロナウィルスが世界を席巻する。大型連休を目前に控え、内閣総理大臣は特措法に基づく緊急事態宣言を発出し、人々には外出自粛を、人が密集する事業所には営業自粛を求めた。「命を守るため」という触れ込みであった。
しかし、日本は他国と比べて異常に死者数が少ないというデータが出続ける。何が真実なのかまったく不透明な中で、人々は不確かな情報に感染(=インフォデミック)し、合理的な判断を下せなくなる。
そんな中、「人は死ぬときは死ぬ」とライブ活動を続ける伝説的なミュージシャン・浅倉マリがメディアに登場。真行寺は高齢な浅倉の監視と説得を、水野玲子捜査一課長に命じられる。果たして、浅倉が仕掛けた引退コンサートはどのような結末を迎えるのか?

★感想
『DASPA-コールドウォー』を真行寺の側から描いたストーリーです。
この物語には沢山の問題定義がされているように思います。

“人が自由に生きる”と言う事に今一度考えさせられるお話です。
確かにマイナンバーなどの管理体制が整えば、様々な手続きも迅速に行うことが出来ると思います。
但し、そこには個人情報の厳格なリスク管理が無ければならないのですが、実際はバラバラと漏れているのが現状です。
そこに個人の自由を脅かす様々な要因が生まれます。
でもこの情報管理が、このコロナ渦における救世主として位置づけられ、緊急事態宣言のような厳しい自粛をしなくも生活が出来ると思わせています。

ラストのワンシーン、丘の上で佇む真行寺の見たものに、一縷の希望を見ながら読み終わりました。

このコロナ問題をテーマに、こんな面白い作品を書いて頂いたことに感謝します。

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