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写真集 東京コロナ禍 横木安良夫日記 03

撮影 初沢亜利 東京コロナ禍 解説 佐々木中

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解説 佐々木中 「初沢亜利、レベル4」
このまま、
東京コロナ禍~初沢亜利~レベル4  というタイトルにしたいぐらいだ。
解説もすごくよかった。やはり他人に書いてもらうべきだなと思った。

この写真集は、北朝鮮の最初の写真集「隣人」
と同じぐらい好きだ。
それは、どちらも観念的なところをすっとばして、
正しいか、正しくないか、といった写真にとってはどうでもいいことを
見事にスルーしている写真集だからだ。


理屈や倫理や正義を語るより
見たいの?見たくないの?
撮りたいの?撮りたくないの?に徹しているとこがいい。
インチキじゃない。
撮ろうと決め、卑怯な、日本人の同調圧力をあてにした
政府や都の欺瞞を、あざわらうかのように、
カメラを持って「東京漂流」(かつてそういう本があった)したことがすべてだ。
そこには全然事件が写っていない。
それなのに、日常じゃない。
空虚だ。
戦争だってそこに住む人間にとって日常だというのに。
かつて70年以上前の
東京大空襲の後の破壊されつくした大東京でもない、
欧米ロックダウンのような、中性子爆弾で、生物だけが死に絶える、
風景でもない。
あやふやな、非科学的な論拠で、
人々をコントロールしようとするあいつらめ。
個々人が考えるためのデータは秘匿。
ああ、個人情報保護法はこうやって使うのだ。
毎日、毎日、ひとりなかよくステイホームだとか、
よい子の、ひとり集団におだて上げる、
影に隠れる、あなたたちを信じない。
自分たちの既得権をまもるためにきゅうきゅうとして、
恫喝する。
亜利は、そういう、有象無象に怒りながらも
シャッターを押す。
いや、怒ってもいない。
自分ひとりが、人類最期の瞬間さえ、見届けるように。


初沢亜利は、へんな男だ。へんな写真家といいかえていい。
パリ生まれの、日本育ち、イケメンである。
そんな彼の父親は左翼思想ギンギンの写真家だ。
もっとも僕が、父親の名前を知ったのは、
超資本主義社会の申し子だった、クルマ雑誌NAVI誌の
表紙を撮っていたからだ。
その雑誌の最盛期の編集長、鈴木正文は、今や
さらに資本主義の中枢の出版社、コンデナストの「GQ」の編集長だ。
鈴木は、慶応の学生時代、1969年、東大安田講堂にたてこもり逮捕されている、自称ゴリゴリの共産主義者であり書く文章もそれが売りだった。
まあ、今と違い共産主義は決して終わった思想ではなく、
50年前、共産思想はリアルにまだ先端の勢いがあった。
超単純に言えば、左翼は「かっこよかった」のだ。
右翼は超ダサく見えたことを今の人は知らないだろう。
そんな時代の父親を持ち、
青山中学、暁星国際、そして上智大学社会学科に入り、卒業した。
実は知らなかっが、wikiを見たら、子役をやってたと書いてあった。
舞台にたち、小学校4年にはディズニー映画の「ピノキオ」の日本語吹き替えをやったという。世代が違うから知らないが、
そんな華々しい過去があった。
そうか、そうか、そうなのか。
それで亜利は目立ちたがり屋なのだ。
上智では写真部に所属し、処女作「Tokyo Poesie」が太陽賞の最終候補となり、東京新聞に150回の連載を持った。その後、新右翼ルートで、よく意味はわからないが、イラク戦争直前のバグダッドでの写真集「Baghdad2003」
を出している。完全硬派だ。
そして驚きの、日本国民全員が、北朝鮮をこき下ろしている時、
亜利は、自分の目でその国を見て、体験したいと思った。
「隣人。38度線の北」
2弾めの「隣人、それから。38度線の北」
それがどんなに、国家に加工された景色と人間関係だとしても。
そこに、物言わぬ無思想のカメラという機械は、
だからこそ何かを映しこむ。
それらはとても美しい、写真集だった。

震災後すぐバイクで向かった、東日本大震災
True Fellings 爪痕の表情」
そして沖縄に1年以上住んで撮り、写真集にする。
「沖縄のことを教えてください」
それらの多くは、写真界、では少し認めるけれど、
あきれているだけで、本当はあまり認めない。
亜利が都会人のくせに面倒な議論をふっかけてくるからだ。
まあそれは、彼の人間性(超褒めているのだ)の因果だ。
亜利は矛盾だらけだ。
だから彼の写真、いや彼のカメラは信じられる。
ことばよりも、いちまいの写真の良しあしよりも、
この数ケ月彼が見て、シャッターを押し、記録したカメラ。
そのカメラを、ことばよりも信頼している亜利は信用できる。

応援するべきだし、
買うべきだし、
見るべきだ。
家のなかで、びくびくしながら、ステイホームしていたとき、
前線で写真を撮った、
初沢亜利の無神経な愛に乾杯!







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ALAO YOKOGI  横木安良夫
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