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ワーグナー 三光長治

パルジファルを見に行くので、直前3日間に読み(直し)ました。

ワーグナーの伝記という側面もあるけれど、むしろいくつかのスポットライトからワーグナーを照らした評伝という本です。


面白かったところ

1848年にワーグナーがパリ蜂起に影響を受けたドレスデンでの革命に参加したとき、バリケード作りの指導にあったのはドレスデンのオペラの建築家ゼンパーだったこと。王侯の委託を受けて、二人ともポジションもらっています。ゼンパーは自分の名前を冠したオペラ座、ワーグナーは、主席指揮者として雇われ、かつ自作の演奏もできるようになったのに、それでもなお、革命に参加してしまう、というのは、私みたいに社畜となっている人間にはちょっと理解ができないところ。

このドレスデンのゼンパーオペラは、構造もとても面白く、少し迷路のようであり、入るとワクワクする劇場です。


で、バイロイトもこの人が建築したと思っていましたが、Wikiを見ると、ワーグナーがゼンパーのアイデアを盗用した、と書いてある。ん?盗用。英語版のWikiでは、ミュンヘンに作られるはずだった劇場、のアイデアをゼンパーの許可を得ずに建てたとあります。この辺のゴタゴタも面白いかなあ。


ゼンパーもその後チューリッヒに行くんですね。ワーグナーはルツェルン。その後ウイーンに行って、美術史博物館、自然史博物館!あれもゼンパーだったんだ、という発見がありました。


あとは後半生の妻となったコジマ。リストの娘です。彼女無くしては、このワーグナーの作品群はなかった、ということ。

コジマの日記というのがあって、二人の生活を詳しく書き残しているらしい。三光さんは、こちらも翻訳しています。ただ1冊5000円超。興味はあるけど、高すぎ。


あとはパリのワーグナー。冷遇されたワーグナーは大変苦労したらしく、その後この街のイメージをタンホイザーやパルジファルの淫蕩のシーンに結びつけ、その対比として、ジークフリートやパルジファルのような自然児による自然主義的なロマンティシズムの勝利という構造になっているという風に読み取っていました。


あと、SF小説をワーグナーは知らなかったと思われます。

昔の東京リングは、宇宙船の中のシーンがあったように記憶しています。あるいは昔のベルリンのリングは地底世界のトンネルの中。松本零士の漫画も宇宙。惑星ラインとかあったかな。演出ではこういうのがありますが、内容が自然とロマンが中心になっているので、違和感が面白い程度かな。

ベルヌの月世界旅行や海底二万里は1860年代。ワーグナーの豊作な時期になります。もしこれをワーグナーが知っていたらスペースオペラを作ったかどうか?




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