【#8 嗅覚】あとのまつり 2013~2015 邦楽編
「ああ、あのバンドね。俺、インディーズの頃から知っててさ……」
多くの(自分を含めた)自称音楽好きにとって、この言葉が一番癪に障る。
だからどうした?
KingGnuをSrv.Vinciの頃から知ってたって、電気グルーヴのナゴム時代のソノシートを持っていたって、意味なんてない。
だってあなたが知らなかったとしても、そのアーティストは売れていたはずだから。
……そうは書いてみたものの、実際に自分が結成当初から好きだったバンドが売れると誇らしくなってしまう気持ちはわからなくはない。
YouTubeでこっそり見ていたシンガーが、少し小綺麗になってテレビに出ているのを見ると「立派になったねぇ……」と、さも親戚のように感動してしまう。(ちなみにこれは、あいみょんのことだ)
それを自慢げに話すのは下品だが、誇らしくなるのは当然のことだろう。
そして稀に「好きになったアーティストが全部売れていく」という才能を持ったリスナーがいる。
それは、ある種特殊な嗅覚を持っているのだ。そういう人が不思議と周囲にいた。
自分はというと、からっきしそういう才能はなかった。知っている時には売れている、応援していたら解散してしまった。そんなことばかりだった。
特に後者において深い傷を負った。もう少しライヴに行っていれば、ちゃんと音源をチェックしていれば……たらればばかり頭を浮かぶ。
高校時代に愛聴していながら、今はもう聴くことが難しいバンドたちをここで弔いたい。
asobius
厳密に言うと、このバンドは解散していない。2018年末にボーカルの甲斐以外全員脱退してしまった。
彼らを知ったのは高校一年生の時。タワレコ限定シングルだった「starlight」に度肝を抜かれた。「なんじゃこれ!日本版コールドプレイだ!」という無邪気に喜び、思わずアルバムも買ってしまった。
エレクトロシンセのリフと雄大なメロディ、そして音数の多さ。ギターバンドばかり聴いていた自分にとっては新鮮に映ったのだ。
そこから5年間、同じような音楽性を貫いてきたがメンバーが全員脱退。
同時応援していたオリジナルメンバーはもう揃うことはないが、活動が再開したらこっそり観に行きたいと思っているバンドの一つだ。
恋する円盤
名前とアーティスト写真から分かるように、爽やかインディーポップバンドだ。
しかし嫌味のない爽やかさ。2014年当時「(500日)のサマー」にはまっていたのだが、それにも共通するナードな感じをなんとなく嗅ぎ取っていた。
曲自体もUKのインディーポップスっぽいギターの質感や、男女ツインボーカルのコーラスワークが今聴いても心地いい。
メロディも洗練されていながらもJ-POPっぽい、いい意味のダサさやとっつきやすさがあった。
しかし、デビューから1年経った2015年末に突如解散。リリースは2枚のミニアルバムだけだっただけに、なんともモヤモヤした記憶がある。
さよなら、また今度ね
個人的には変なバンド名ブームのはしりだったように思うバンドだ。略称は「さよ今」。今でもカラオケで歌う時があるし、よく歌いたくなる。
それだけポップでいい抜けのあるメロディだし、口ずさんでしまうひねくれた歌詞を書くバンドだった。
それでいて演奏はラフでソリッド、高校生にはたまらなかった。どこか、フジファブリックにも近いものを感じていたような気がする。
2014年のセカンドEP『夕方ヘアースタイル』は今でも好きなポップソング集だ。これをリリースした直後に活動休止し、その後解散。
ソングライターの菅原達也は今は「め組」というバンドをやってる。
随分雑な説明になってしまった。でも当時から今でも無条件に好きなバンドたちである。
プレイリストを作りたいのだが、アーティストは残念ながらSpotifyにない。書きながら、「今好きなアーティストは今ちゃんと聴くべき」という当たり前のことを思い直してみたりした。
(ボブ)