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ある
2019年5月11日 10:24
それは、禁煙中のタバコのように、それは、ネット中毒者が持つスマホのように、それは、心が弱った時に聴くロックのように、僕の片足を拘束している。あの人の、抱きかかえた猫のように柔らかい肌と、春の日差しに晒された砂ほどの体温に、もう一度、もう一度だけ、包まれたいと願う。それが叶わないので僕は、不思議な色をした、明らかに毒々しい綿(わた)の思い出に、身を任せてしまうのだ。