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倉庫作業者の労働時間規制が話題にならない理由とその影響
2024年における物流業界の課題として、倉庫作業者の労働時間規制が注目されにくい理由を考察すると、その背景にはトラックドライバーと倉庫作業者の労働管理の違いがあることがわかります。
トラックドライバーの労働時間は、車両の位置情報や稼働状況を監視することで比較的簡単に把握できます。
これにより、彼らの労働時間規制が話題になることが多いのです。
しかし、倉庫作業者の場合、労働時間の管理はタイムカードだけに依存することが多く、実際には「見えない残業」が蔓延している現状があります。
たとえば、タイムカードに記録されていない時間帯に作業が行われても、それは公式な労働時間にはカウントされず、いわゆる「サービス残業」が常態化しています。この問題が浮き彫りになるのは、労災事故などの特別な事態が発生したときだけであり、通常は会社内部で処理され、表に出ることはありません。
これにより、倉庫作業者の実態が社会的な議論の対象になりにくいという現象が生じています。
また、労働基準法第34条に基づく休憩時間の規定も存在します。
労働時間が 6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分 8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない、と定められています。
ただ、6時間を越えなければ、休憩時間は必要ないとなっていますが、ちょっと考えてみてください。
9時から勤務した場合、15時まで休憩無しで働けという事なります。
これが何を意味するかと言えば、昼ご飯を食べないとなります。
そんなの無理という人がいるかもしれませんが、私はそれで働いていました。
正直、現場の多忙さから実際には適切な休憩を取ることが困難な状況が頻発しています。
また、作業を早く終わらせるために、休憩を削ることが日常的に行われています。
こうした背景には、システム上では休憩を取ったと記録されていても、実際には休憩せずに作業を続けることが可能な仕組みがあるため、表面的には労働基準法を遵守しているように見えるものの、実態は異なるという問題があります。
倉庫内の作業者は、多くの場合、非正規雇用のパートや派遣社員によって支えられており、これらの労働者たちは正社員の労働時間規制を守るための犠牲になっていると言っても過言ではありません。
正社員の労働時間が守られる一方で、非正規雇用者にはそのしわ寄せがいき、追加の作業が割り振られることが常態化しています。
このような状況下で、倉庫作業者の実態が報道されない理由として、企業が表面的には労働基準を守っているかのように見せかけていることが挙げられます。
こうした隠れた負担が、非正規雇用者の存在によって支えられているのです。
一方、トラックドライバーからは、しばしば「フォークリフトオペレーターが休憩時間に作業をしてくれない」といった不満が聞かれることがありますが、これは現場の実情を知らないことによる誤解かもしれません。
倉庫作業者は、トラックの荷物の積み下ろしだけでなく、その他の多岐にわたる業務にも従事しており、休憩を取るタイミングも、その日の荷量や倉庫内の作業の進みぐらいによって考える必要があります。
倉庫作業者が直面する業務の多さやその複雑さを考慮すると、休憩時間に作業を止めることが必要である場合が多いのです。
そのため、トラックドライバーのXの呟きの中で、フォークリフトオペレーターが休憩時間に入って、荷物の積み下ろしをしてくれないというものを見ます。
さまざまな倉庫があるのですから、態度が悪い、挨拶をしない、愛想が無いといった倉庫作業者も様々な人がいます。
にも関わらず、大半の倉庫作業者の対応が悪いと決めつけるのもおかしなものです。
黄金のペットボトル(尿入り)を捨てるようなモラルに欠けているトラックドライバー (https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20240708_35158、https://www.fnn.jp/articles/-/731049)もいるのですから。
物流業界では、トラックドライバーや運搬部分に焦点が当てられがちですが、実際には倉庫作業の最適化こそが物流全体の効率を向上させるために不可欠です。
しかし、倉庫の作業環境は改善されず、非正規雇用者に依存した人海戦術が続いています。
これにより、倉庫内作業者の労働環境は、ますます厳しくなり、結果として物流業界全体のボトルネックとなっているのです。
さらに、倉庫の環境格差や労働条件の格差が、正社員の収入格差にもつながりつつある現状があります。
既に一部の先進的な倉庫では、システムや設備が整い、労働環境の格差が広がりつつありますが、改善が進まない倉庫では時代に取り残されるリスクが高まっています。
こうした格差が広がることで、正社員の間での収入や待遇の差も拡大し、結果として業界全体に深刻な影響を与える可能性があります。
このような状況の中、労働時間や休憩時間が適切に守られていない非正規雇用者に負担がかかる現実がありますが、これが報道されることはほとんどなく、実態はブラックボックスの中に隠されています。
物流業界の真の課題は、部分的な最適化ではなく、全体最適化に向けた対策を講じることにあります。
そうしなければ、倉庫作業の問題は根本的に解決されず、非正規雇用者に依存した体制が続くことで、物流業界全体が停滞し続けるでしょう。
例えば、トラックGメンや標準運賃の推奨など、物流を支える運送・運搬部分に焦点を当てた取り組みが進められている一方で、倉庫内作業者に関する取り組みは十分ではありません。
こうした部分最適に重点を置いた対策だけでは、物流全体の効率向上には限界があり、倉庫作業の全体最適化が不可欠です。
倉庫内作業が効率的に行われなければ、人海戦術やアナログ作業に依存した体制が続き、物流全体のボトルネックとなり、業界全体が時代に取り残されるリスクが高まります。
さらに、時代に合ったシステムや設備を導入している先進的な倉庫では、労働環境や労働時間の格差が広がりつつあり、その結果として人材の質や正社員の収入格差も広がっています。
既にこの格差は始まっており、倉庫内での労働環境の違いが、物流業界全体の将来に大きな影響を与える可能性があります。
誰が好き好んで、空調管理のない倉庫で長時間働きたいと思うでしょうか。
しかも最低賃金で。
こうした現状が続く限り、倉庫作業者の労働環境は改善されず、非正規雇用者に依存した体制が続くことで、物流業界全体の効率化も遠のくばかりです。