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「怒り」と「弱音」…今週の『虎に翼』

日本初の女性弁護士で、後に裁判官となった女性・猪爪寅子(伊藤沙莉さん)とその仲間たちが、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子供や追い詰められた女性たちを救っていくリーガルエンターテイメント、朝ドラ『虎に翼』の第3週「女は三界に家なし?」。

「女は三界に家なし」とは「女は幼少のときは親に、嫁に行ってからは夫に、老いては子供に従うものだから、広い世界のどこにも身を落ち着ける場所がない」の意味(「コトバンク」から引用)。

寅子が2年生となり(1933年)、「明律大学女子部」が存続の危機に瀕していた月曜日。女子部をPRするため、秋の明律祭で法廷劇「毒饅頭殺人事件」を行うこととなり、涼子(桜井ユキさん)が脚本を担当。

その仕上がりを読んで、寅子の脳内では劇中劇が再生。乙蔵役の書生・優三(仲野太賀さん)が、甲子役の寅子の母・はる(石田ゆり子さん)をバックハグ。石田さんの妹・石田ひかりさん主演の『あすなろ白書』(1993年)における、木村拓哉さんの「あすなろ抱き」を意識したものでしょうね。

舞台衣装を皆で寅子宅で作ることになりますが、お茶を出そうとした花江(森田望智さん)を、香淑(ハ・ヨンスさん)が女中と勘違い。笑って流そうとした花江ですが、明らかにムッとしていて「寅ちゃんに、お嫁に来た人の気持ちなんて分からないわよ」と。顔をゆがめた絶妙な表情に『恋する母たち』を思い出しました。

寅子宅に涼子の家の執事・岸田(奥田洋平さん)が迎えに来た火曜日。奥田さんは『ひよっこ』ではラジオ工場の主任・松下役で、「ご安全に!」の掛け声で親しまれましたが、今回は嫌味タラタラな黒執事。アル中気味の母・寿子(筒井真理子さん)のプレッシャーも半端なく、涼子の悩みも深い。

法廷劇当日。男子学生のヤジに怒ったよね(土居志央梨さん)が、舞台を降りて詰め寄りますが、突き飛ばされ。これに激怒した寅子は「ちょっと―!」と鬼の形相で吠え(ナレーション「舞台降りたら駄目!」)。にしても、明律大学の男子学生の質が悪過ぎるな。

よねが男子学生の金的を蹴り上げ、法廷劇が中止となった水曜日。足を怪我したよねを、住み込みで働いているというカフェまで付き添った寅子たち。そこでよね自身の口から、壮絶な過去を聞くことに。

貧農だったよね(早瀬憩さん)は、助け合っていた姉(原愛音さん)が15歳で女郎に売り飛ばされ、自分も同じ目に遭うところを逃げ出し。再会した姉は置屋に騙されており。よねに近づいてきた弁護士に体を売ることで、お金は取り戻せるも姉は男と失踪。残されたお金で「明律大学女子部」に。いや、ここまで戦前の暗部を深く描いた朝ドラは今までなかったのでは?。

歴史を振り返りましょう。寅子が見合い相手と、世界恐慌(1929年)について話したのが1931年。日本でも昭和恐慌が起こり、農村部は特に苦しく、娘を身売りする家が続出。

1936年に起きた『二・二六事件』の背景でもありました。決起した兵士の中には、姉妹が売られた例もあり。当時の腐った政治家と資本家だけが「わが世の春」…あれっ?昭和初期と令和って似ている!?

よねの話を聞いて、声をかけたいものの、何と言ったらいいか、寅子が逡巡していた木曜日。考えあぐねた末、生理話に一旦フリ。次いで涼子が、よねの男子学生股間蹴り上げを称賛。最後は、寅子が法廷劇再検証を提案。

花江とはるの協力の元、饅頭作りと再検証をしていたら、涼子が法廷劇のモデル事件の真相を告白。学長(久保酎吉さん)が、世間の同情を引くため、被告の女性を無知で愚かな女性に改変していることが判明。

花江が突然泣き出し、弱音を吐いた金曜日。弱音を吐いて何になるというよねに対し、寅子は弱音を吐く人を受けいられる居場所(=弁護士)になりたいと。それを受けて、涼子を皮切りに弱音吐き大会。そして寅子は「怒り続けることは、弱音を吐くのと同じくらい大事」とよねをフォロー。

翌日、カフェの姉さん方から生理痛に効くツボを教わり、寅子に教えたよね(ついにデレました!)。すかさず、その情報を教室中に広める寅子。そして、1935年。寅子たちは女子部を卒業。明律大学法学部に進学し、男子学生たちと学ぶことになるのですが…。

気が早いですが、吉田恵里香さんの脚本による本作を、ネット記事でもチラホラ「傑作(の予感)」という文字を見るようになりました。このままいけるんじゃないかな。


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