ドラマ日記『海のはじまり』(第5話)
大学時代、同級生の南雲水季(古川琴音さん)と付き合い、別れた月岡夏(目黒蓮さん)。7年後、水季が亡くなり、海(泉谷星奈さん)という娘がいたことを知り、さらにその父親が自分だと聞かされて…親子の愛を通して描かれる家族の物語『海のはじまり』の第5話。
1週間の夏季休暇を取れることになったと月岡夏から聞いた南雲朱音(大竹しのぶさん)は、それなら1週間、南雲家に住んで海と暮らしてみたらどうかと提案する。夏が泊まりに来ると知った海は大喜びし「ずっと住んでいいよ!」と夏にくっつく。
塚原あゆ子監督と脚本家・野木亜紀子さんの再タッグによる、8月23日公開の映画『ラストマイル』は、連続ドラマ『アンナチュラル』&『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース作品と位置付けられていて、ドラマ出演者も登場。
本作の脚本家・生方美久さんの過去作品『silent』と『いちばんすきな花』の世界とつながった第5話。弥生(有村架純さん)が通う美容院は、『いちばんすきな花』で夜々(今田美桜さん)が働いていた美容院「スネイル』と同じで、夜々の先輩美容師・杏里役だったハマカワフミエさんも登場。
また、水季の同僚・津野(池松壮亮さん)の自宅ソファの隙間から、海のヘアゴムが発見されるシーン。これも『silent』で、紬(川口春奈さん)と別れた湊斗(鈴鹿央士さん)が、紬の忘れ物のヘアピンを発見し電話したシーンを彷彿。過去作とつながると、厚みも出ますし、何より楽しい。
今回の最大の見どころは、夏か家族に海の存在を告白するシーンではあったでしょうが、多くの方が言及されているので、夏の母親役が西田尚美さんだけに「割愛(カッツアイ)」。
今回注目したのは、もう何度か言及されている「外野」というキーワード。図書館で津野が「死んでから現れるなんてみんな調子いいよね…」と言うと、同僚の三島(山田真歩さん)が「ずっと支えてたの津野君くらいで、いなくなったら急に外野な感じ。ちょっとモヤモヤする」と反応。
この場合の「外野」は関係ない「第三者」といった意味で、その反対語は恐らく「身内」とか「家族」とか「血縁」になるのでしょう。これまで親しくしていた関係性が否定されるような疎外感を感じているというわけです。
一方で、「家族」のありようも3パターン描かれていて、血の繋がらない者もいる夏の家族は再婚家庭としては上手くいき過ぎなぐらい。南雲家は血はつながているけれども、祖父母と孫という将来への不安を残しており。また、弥生は家族とは上手くいっておらず、むしろ親が嫌い。
『新宿野戦家族』に出てくる母親(臼田あさ美さん)のように、娘(伊藤蒼さん)が彼氏(趙珉和さん)から性的虐待を受けているのを見て見ぬふりという家族も現実にはいて。家族が拠り所の者もいれば、地獄の者もいる。
近年の「疑似家族」ドラマの流行は、多様性が認められつつある中、従来型の家族像への疑問であったり、新たな家族像の模索であったのだろうと思いますが、本作はそうした「疑似家族」ドラマへのカウンター作品のような気がしてきました。
奇しくも、今期類似の設定や同一事務所出演者、作風の明暗などで比較されることが多い『西園寺さんは家事をしない』も「疑似家族」もの。これはこれで楽しんでいますが…。
「疑似家族」がいつしか恋愛関係となり、最後は結婚して本当の家族になってハッピーエンド、という風なドラマの消費のされ方への、生方さんの「異議申し立て」とまでいったら言い過ぎかな。人生も家族も、そんな簡単なもんじゃないよ、と。
すでに生方さんは最終話まで一応完成させているらしく、恐らくは津野や三島を「外野」気分では終わらせないとは思いますが、「疑似家族」ではない夏と海ら「家族」をどう着地させるか、楽しみにしています。
余談:昨日の『安住紳一郎の日曜天国』ゲストは古舘伊知郎さん。テレビ朝日時代のモスクワオリンピック話が興味深く。日本がボイコットした記憶しかなかったのですが、まさかテレ朝独占中継していたとは。「ドーピングバリバリ」(笑)。