「一人称」は人それぞれ
話し手自身を指す「一人称(自称)」。日本語における一人称には、公的・私的、男性・女性、年齢や地域によってさまざまなバリエーションがあります。
有名人の例をちょっと挙げてみましょう。例えばビートたけしさんは、「俺等(おいら)」という一人称を使います。これは主に関東地方の男性が使用するものだそうです。
一方、明石家さんまさんは「俺」。私的な場面では、「僕」と並んで男性が多く使用する言葉。その前妻・大竹しのぶさんは「あたし」。「私」のくだけた表現で、女性が使うことが多い印象。
作品に使われた一人称を挙げてみましょう。夏目漱石の小説『吾輩は猫である』の「吾輩」。若竹千佐子さんの小説『おらおらでひとりいぐも』の「おら」、松本零士さんの漫画『男おいどん』の「おいどん」。高橋亮子さんの漫画『つらいぜ!ボクちゃん』では、女の子の主人公が「ボク」と自称。
個人の中でも、会話と文章、公的と私的な場面で、一人称を使い分ける場合もあるでしょう。自分の場合、と書いている通り文章では「自分」。会話でも「自分」が多め。公的度合が強いシーンでは「私(わたし、わたくし)」ですかね。
自己内対話(心の中の会話)や、一人で詩や名言などを朗読する際には、子供の頃や若い頃に使っていた「俺」だったり、「僕」だったりするんですけどね。
「僕は 僕たちは 身軽でありたい しなやかでありたい 強かでありたい そして繊細でありたい そうして歩く 歌いながら 気まぐれに 踊るように」(岡野玲子『ファンシィダンス』より)