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邦画を支えた「伊丹作品」と夏ばっぱ

日本映画の最盛期は1958年。観客動員数は、のべ11億人越え(近年の7倍)で、黒澤明監督の『羅生門』をはじめ、邦画が次々と国際映画祭で受賞を果たしたのも1950年代。

テレビの普及などの影響もあり、日本映画は低迷期を迎え、1985年には洋画のシェアが邦画を抜き、それは実に2006年まで続きました。実際、1980年代のデートムービーとは言えば洋画で、邦画は「ダサい」という風潮すらあり、ファンは悔しい思いをしていたものです。

そんな低迷期を支えたものとして、角川春樹さん時代の角川映画、そして伊丹十三監督の一連の作品があったでしょう。3月27日は、そんな伊丹監督の妻にして、伊丹作品の主人公を演じ続けた、宮本信子さんの誕生日。というわけで、宮本さんのおすすめ作品をいくつか挙げてみます。

伊丹さんは映画監督としてはデビューが遅く、伊丹十三名義では10作品しか残していません。作品としては、『お葬式』(1984年)や『タンポポ』(1985年)の方が名作といわれていますが、ここは宮本さんが広く知られるようになった『マルサの女』(1987年)を挙げておきましょう。

脱税摘発のプロ“マルサ”の女の活躍を描いた大ヒット作。税務署のやり手調査官・板倉亮子は、一軒のラブホテルに目を付け調査を始めるが、なかなか証拠を掴めずにいた。そんな折、亮子は国税局査察部に抜擢される。

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伊丹さんの自殺後(諸説あり)、女優業セーブしていた宮本さんは、『眉山-びざん- 』(2007年)で映画復帰した後、『阪急電車 片道15分の奇跡』(2011年)に出演。これまでも何度か挙げている ハートフル群像劇の傑作。宮本さんは芦田愛菜さん演じる女児の祖母役。凛として、痛快で、深い。

宝塚から西宮北口間を走る、えんじ色の車体にレトロな内装の阪急今津線。その電車に様々な愛に悩み、やりきれない気持ちを抱えながら、偶然乗り合わせただけの乗客たちがいた―。片道わずか15分のローカル線で起こる、世代を超えた温かい奇跡の物語。

最後はNHKで、『あまちゃん』(2013年)『奇跡の人』(2016年)『ひよっこ』(2017年)と、出演作に名作が多いのですが、ここでは2012年に、特集番組として2夜に渡って放送された『こだわり男とマルサの女』。伊丹映画のバックボーンと、宮本さんの人となりがわかったような気がしました。

天才マルチ人間・伊丹十三は、51歳で監督デビューした遅咲きの才人。映画監督にたどり着くまでの奔放にしてユニークな人生の機微を、「ドラマ 宮本信子 天才との日々」では伊丹のコダワリに寄り添って生きた“女の目線”を通じて、「ドキュメンタリー 伊丹十三 『お葬式』への道」ではコダワリを貫いた“男の眼”を通じて、両面から描く。

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残念ながら、NHKオンデマンドでも現在は見られないようで、再放送を願うしかないのかな。

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