令和的不倫ドラマ『あなたがしてくれなくても』中盤までの雑感
視聴率はともかく、今期最も話題となっているドラマ『あなたがしてくれなくても(あなして)』。初回の感想は書いたものの、それ以降は取り上げていませんでしたが、視聴は継続。第5話が転換点になりましたので、第4話までの話を中心にここまでの雑感を、昭和歌謡の話も交えながら少々。
メインの登場人物は、二組のセックスレス夫婦4人。なんとなくお互いにレスになったのではなく、各夫婦にそれぞれ、したい側としたくない側がいて、その理由は全く違います。
誠(岩田剛典さん)としたくない楓(田中みな実さん)の理由は、仕事が忙しくて余裕がないことに加え、万一妊娠し、子供ができた場合、仕事上のキャリアが妨げられるから。
一方、みち(奈緒さん)としたくない陽一(永山瑛太さん)は、一言でいえば飽きたから。自分を甘やかしてくれる母親的妻のみちは、居心地はいいけれど性的にはちょっと…といったところ。
楓は部下にも誠にあたりが強い、ちょっと嫌な女ですが、キャリア志向ゆえに今は子供は必要ない、妊娠を恐れているということは、否定的には描かれておらず。現実社会をみれば、そういう選択肢もあるよね、という令和的な価値観を感じます。夫婦間においても「性的同意」が徹底している点でも令和的。
これが昭和だったらどうでしょう。海援隊(武田鉄矢さん)のヒット曲に「母に捧げるバラード」というのがありますが、そのセリフパートで、夫があの日酒を飲んで帰宅しなければ、出来の悪いお前は生まれなかった、というような趣旨の話があります。「性的同意」なし、あるいは消極的に応じての妊娠ということなのでしょう。
一方の陽一は知り合った結衣花(さとうほなみさん)とキス。帰宅した陽一はみちを押し倒して、事に至るのですが、心ここにあらず。罪悪感という見立てもありますが、結衣花とのことで性的に興奮した結果かなと。だからこそ、みちは抱かれながらも、陽一の気持ちが自分にないと感じ取っていたのでしょう。妻の身体を借りただけという…。
性的衝動が収まらない陽一は結局、職場でもある店内で結衣花と体を重ね。さらに「なかったことにしてくれ」とあっさり切り出すゲス行動3連発。いや、ほんと第4話までの永山さんのゲス夫ぶりが完璧で、みちと誠の関係が仕方なく見える、あるいは純愛に見えてしまうという。いい仕事してます。
みちと誠の関係性も、水族館デートからの車内キス、満員の社内エレベーターでの小指つなぎなど徐々に進み、迎えた社員旅行。たまたま1人部屋だったみちの部屋で星を眺めた誠は、「好きです」と告白し、みちをソフトに押し倒すように上になり、みちの浴衣の帯に手をかけるのですが…。
不意に涙を流したみちは、「変だな、私」と誠に謝罪。誠の方も「俺の方こそごめん」と即座に謝罪。暗黙の「性的同意」があると推測した誠の先走りですが、ここでキッパリと止めるのが令和的だなと。
これが昭和ならどうでしょう。爆風スランプに「青春りっしんべん」という曲があります。家族が外出している自宅に、彼女を招いて、事に至ろうとする少年の話なんですが、何度も何度も彼女を押し倒そうとしては、泣かれの繰り返し。「性的同意」のない世界。
翌日、誠は「約束します。もうあなたに指一本触れない。だから今までみたいにそばにいて欲しい。俺にはあなたが必要なんです」と。みちも「新名さんのそばにいます」と応えたところで第4話終了。この時、誠がみちにプレゼントした砂時計が、第5話に効いてくるんですよね。
誠との関係性を見破られた後輩の華(武田玲奈さん)の助言もあり、みちは「私たちの関係はずっと続くわけない。砂時計みたいにキラキラして見えるのは一瞬だ。その一瞬に私たちは逃げてるだけだ」と誠に別れを切り出し、陽一との再出発を目指しますが、さてどうなりますか.
最終的には、みちと誠も一線を越え、両夫婦ともに離婚。しかし、みちと誠は再婚することなく別れ(ドラマはここまで)、数年後、偶然再会した二人は…映画化決定!みたいな『昼顔』展開を予想しています。
余談:本日のラジオ番組『こねくと』の「 町山智浩のアメリカ流れ者」のコーナーでは、Netflix配信『サンクチュアリ -聖域-』を紹介。日本の大相撲のタブーにも切り込んだ本作を「これはピエール瀧のガーディアンオブギャラクシーだ」と評した町山さん。
瀧さんは本番組の前番組『赤江珠緒たまむすび』の曜日パートナーで、町山さんとは旧知の仲。その後、瀧さんが逮捕されたのはご存知の通り。最後は「Netflix、次はジャニーズだ!別のタッキーの」と町山さんが爆弾を投げ込んで終了(笑)。