ドラマ日記『今ここにある危機とぼくの好感度について』&『コントが始まる』
名門国立大学の広報担当・真(松坂桃李さん)が、次々に巻き起こる不祥事に振り回されるブラックコメディ『今ここにある危機とぼくの好感度について』の最終回。今期ドラマの最高傑作だったといっていいでしょう。
謎の虫刺されが、命にも関わると知らされた真の元に、みのり(鈴木杏さん)が励ましの電話をかけてくる。勇気を得た真は、被害の原因が帝都大の施設から流出した蚊だということを三芳総長(松重豊さん)に報告し、理事たちによる隠ぺいの事実を暴こうとする。
好感度を唯一の処世としてきた真も、サハライエカに刺されたことで逃れられない当事者となり、ついに覚醒。しかし、再び理事たちの抵抗にあい、またもや隠蔽されるかと思いきや、総長が強行突破、マスコミに公表する展開。大学の信頼回復への長い道程があるにせよ、希望のある最終回でした。
総長の言葉に痺れました。「必ずや名を正さんか(「論語」)。問題には正しい名をつけなければ、それを克服することができない。どんなに辛くても、それを証拠不十分と言い換えてはならない」
「我々は組織として腐敗しきっています。不都合な事実を隠蔽し、虚偽でその場をしのぎ、それを黙認し合う。何より深刻なのは、そんなことを繰り返すうちに、我々はお互いを信じ合うことも、敬い合うこともできなくなっていることです」
同作の制作統括・勝田夏子さんは「リアルサウンド」のインタビューに、この作品を作るきっかけとなった、脚本担当の渡辺あやさんとの会話を明かし、こう答えています。
「渡辺あやさんと前々から『最近、言葉が破壊されているよね』『日本語が壊れていっているよね』という話をしていたんです。つまり、何か言っているようで何も言っていないような言葉や、はぐらかして何も答えないみたいなことが世の中で罷り通っていると」
「20年くらい前だったら許されない振る舞いだったことが、今は政治や行政の世界でも企業社会でもたくさんあって、それで逃げ切ったもん勝ちみたいな世の中になってしまっている現状に、私も渡辺あやさんも非常に強い危機感を持っていたんです」
「今ここにある危機」とは、まさにそういうことだったんですね。左右からいろいろ言われがちなNHKではありますが、今この時期に、こんな内容のドラマを、地上波夜9時にまだ放送できることに、希望を感じました。にしても、今期『あのキス』と2作品に主演する松坂さんの充実ぶりが凄い。
売れないお笑いトリオ・マクベスと、彼らのファンになるファミレス店員・里穂子(有村架純さん)らが織りなす青春群像劇『コントが始まる』の第7話。
里穂子が抱える悩みに勘付いた潤平は、奈津美(芳根京子さん)の知り合いの転職エージェントへの紹介話を持ち出す。一方、瞬太(神木隆之介さん)と共にインテリアショップに訪れたつむぎ(古川琴音さん)。だが、些細なことから喧嘩が勃発。兄妹のような2人の関係にも変化が…。
瞬太が高校3年生の時に購入し、地方ライブの時には3人で乗っていた、マクベスの歴史が詰まった愛車を手放すシーンにしみじみ。自分も初めて買って10年以上乗った車と別れる時には、感傷に浸りました。亡き父母、小さかった姪、そして何人かの元カノたちが乗っていた助手席。
兄妹と公言しながら、いつしか瞬太に恋心を抱いていたつむぎと、まるで鈍感な瞬太という、王道少女漫画展開もいいなあ。ロマンティックではない「不意打ちキス」も本作らしい。作中の笹かまの食べ方やってみたい。