健康の政治的決定要因とは? Political determinants of health その1

Ashです。

米国東海岸で公衆衛生大学院に所属し、社会行動科学を学んでいます。健康に影響を与える要因に関して研究して、人々の健康が、政治や社会、経済的に解消しうる要因によって影響を受けているという考えに基づいて、それらの要因(健康の社会的決定要因)にいかに介入していくかを日々考えています。

健康に影響を与える要因は数多くのものが指摘されており、年齢、性別、遺伝要因などの生物学的要因、ストレスなどの心理的要因、また喫煙や運動不足などの行動様式が知られています。医療専門職はこれらの事項を扱って健康の改善を図りますが、これらが健康に影響に与える影響は意外と大きくないのです。図を示しますが、遺伝や生物学的(Genes & Biology)の影響は10%程度で、医療提供は10%、そして健康に関する行動は30%とされています。

他に健康に影響を与えるものとして注目されているのが、社会的地位、教育レベル、職業、収入、ジェンダーなどの社会的なものがあります。これら社会的、または経済的な要因を包括して社会的決定要因と呼び、割合としては40%程度影響を及ぼしているのはないかとされています

健康状態の差が社会的に不利な状況と関連している場合には、それを健康格差(health inequities)と呼びます。例としては、定職がなく国民健康保険や社会保険料を納付できる経済的状況にない人は医療機関の受診がままならず、健康状態に何か問題が生じてもそれが深刻な状態になるまで放置されるという傾向があります。喫煙率も教育レベルに相関して低下することが知られており、教育レベルの高い人ほどより健康な行動を取りやすいということがあります。
格差自体はこれまでにも多少なりとも存在してきたのですが、日本は過去20年間の間に徐々に格差が顕在化してきたことが明らかとなっています。グローバル化、経済成長の鈍化、非正規雇用の増加、終身雇用制度の崩壊など社会の変化が、格差拡大につながり、健康指標にも反映されてきたと考えて良いでしょう。格差の拡大を放置すれば、社会不満が高まり社会の安寧や国家としての体制にもいずれは影響を及ぼすという懸念が生まれます。

もう1つ健康の決定要因を説明する概念として、政治的決定要因(Political determinants of health)が挙げられています。これは社会システムとしての諸壁や健康格差の解消を進める際の政治的なプロセスによって生じる、より大きな影響のことを指します。関係性の構築、資源の分配、権力の執行などが格差を縮小させる方向に働くこともあれば、その逆の結果を招いてしまうこともあります。政治的なプロセスにも重要な決定要因として認識することが求められるのです。

政治的決定要因には選挙、政府、政策と3つの項目に分かれます。長くなるので、詳細はまた次の会に説明します。

健康格差に取り組む者は、社会的決定要因のみならず、政治的決定要因という概念を知っておくことがゆうかと思いご紹介いたしました。


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