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中指・人差し指(#147)

昨日の続き。クラシック・コンサートをききに行った。シドニーオペラハウス。

シドニー交響楽団のメンバー紹介が無料パンフレットに載ってる。顔写真入りなので、それと照らし合わせて「今日のティンパニはアントワーヌさんね」などと見るのも楽しい。

私はティンパニ奏者が好きだ。まず、一人の場合が多いし、演奏中、太鼓の表面に耳近づけて音の調整をしている様子なんて、なかなかチャーミングだ。

しかし、この日最も私の目をひきつけたのは、フルート奏者だった。フルート奏者は二人いた。まず、演奏前にいちばん早く席について、フルートの音を調整してるんだか何だか真剣に取り組んでいる女性がブルネットの肩までの髪・・・ああ、これはキャロリンさんね、と照らし合わせる。

楽器をかついだ奏者がつぎつぎと入ってくる。私たちは結構早めに席についたので、そうやってステージの上と客席がうまってくる様子を眺めた。

さて、演奏が始まってからだ。
先ほど私が注目したフルート奏者のキャロリンさんは「人差し指」だと気づいた。

なんのこっちゃと思いのあなたに説明しよう。
オーケストラの並びとして、フルート奏者が二人・その隣にオーボエ奏者ひとり・その次にオーボエの低音楽器にあたるコーンラングレ奏者ひとりが並ぶ。これを4本の指に置き換えてみる。

あなたの左のてのひらを顔に向けてあげてほしい。
人差し指が先ほどのフルート奏者キャロリンさんとする。
中指がフルート奏者エマさん。
薬指がオーボエ奏者のシェファリさん。
小指がコーラングレ奏者、男性のアレクサンドルさん。

私たちは2階席にいたのだが、そこからみてもはっきりとわかるほど、中指のエマさんのフルートが素晴らしく響いた。響いただけじゃなくて、演奏する時どんだけ上半身が前後に揺れるんだと思うほど、身体でリズムを取って演奏していた。そして、まるで双子のように全く同じ動きをして演奏していたのが、薬指のオーボエ奏者シェファリさんだった。

フルートは横にかまえる笛だ。オーボエは縦にもつ笛だ。楽器の向きは違うのに、このふたりの奏者の上半身の動きがほとんど同じなのだ。この二人は個人的にも仲がいいのかな。練習も一緒にしたりするのかな、などと想像が膨らむ。小指のコーラングレ奏者アレクサンドルさんはふたりほどではないが、身体が自然に前後して演奏に気持ちが入っているのがわかる。

いっぽう、人差し指のキャロリンさんは、びくとも動かない。直立不動。なので逆に目立つ。人それぞれ演奏の仕方が違うのは当たり前かもしれない。でも、あんなに動いている中指と薬指のそばで、人差し指はぴくりとも動かずに演奏している。早くから席について音合わせしていたキャロリンさん、大丈夫かな・・・と心配になってきた。

中学校のとき仲よかった友達が吹奏楽部でフルートを吹いていた。彼女いわく「いっせいにみんなで音出す時、こうやって、みんなのカラダが同じタイミングで前に倒れる感じ、この動きがいいのよ。心が震える」と言っていたのを思い出した。
中学生のフルート奏者でもそういうんだもの。人差し指のキャロリンさんはもしかしたら、今日は腰の調子が悪いのかもしれない。

さあ、あなたの左手の人差し指をしっかり立てて動かさずに、中指と薬指を上下に動かしてほしい、きっと小指も少し動くはず。この感じが私の見た演奏者の動きだと想像してほしい。

あなたがオーケストラで演奏するとしたらどの楽器を選ぶ?私は断然
ティンパニ。ふふふ。あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。

えんぴつ画・MUJI B5 ノートブック

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