トライアングル(#211)
読んでいた本の中に「トライアングル」という言葉が出てきた。小学校の音楽の時間に出てきた、三角形のメタルの打楽器。わかるでしょう、あのチンチンチンって音が鳴るやつ。しかし、私の頭の中では「トライアングル」という名前に首を傾げた。本当にそういう名前で呼んでいたっけ……。「さんかく……なんとか」って呼んでなかったっけ。ネットでどんだけ調べても名前は一つしか出てこない。それは「トライアングル」。でもね、どんだけ声に出して呼んでも、そういう名前のような気がしない。
そういうことってあなたにもある?
とにかく「さんかく、なんとか」で調べていたら、「さんかくきん」が出てきた。「トライアングル」よりも「さんかくキン」の方が、あの楽器の名前に相応しいような気がした。しかし、もちろん「さんかくキン」といえば「三角巾」のことだ。調理時や清掃時に衛生のために頭を覆う三角形の布のこと。「三角巾」ってここ何十年も思い出しさえしなかったものだ。
三角巾で思い出したのは、中学校の家庭科の先生だった。「鬼ババア」とあだ名がついていた。これも本当にそうか確かではないが、反射的に「鬼ババア」という言葉が頭に浮かんだ。そして、その「鬼ババア」のモノマネが上手な女生徒のことも思い出された。そして、彼女は当時はやっていた「パックマン」のゲームに入れ込んでいた。十円玉をおしげもなく放り込んで「パックマン」をした。私はそれを横で見ていた。
私が昔からどうしてもできないことに、小銭を放り込んでするゲームと宝くじがある。どう考えてもお金の無駄だ。ゲームは負けるし、宝くじは当たらない。私の母は「夢を買うのよ」と宝くじを毎年買っていたが、どう考えてもお金の無駄だった。
パックマンに小銭を注ぎ込む友達、インベーダーゲームに小銭を注ぎ込む友達が、中学校にも高校にもいて、私は横で見ているのが常だった。そして声には出さずに「お金の無駄なのにな、大丈夫かな」と心配していた。
パックマンの女生徒は猫を飼っていて、ノミが常駐していた。今思えば、あの頃はどこの猫も必ずノミがいた。そして彼女はとても上手にノミやダニを毛の間から探し出して親指の爪を合わせてプチッ音を立てて潰した。私はそれも横で見ていた。パックマンを上手に進めていくテンポで、飼い猫のノミを次々と潰していったのだ。お見事だった。見ていて飽きなかった。
こうやって芋づる式に、思い出のかけらが掘り起こされる。それらは取り止めもないけど、確実につながっている数珠なのだ。トライアングル、三角巾、鬼ババア、パックマン、ノミつぶし。それは、長渕剛、貸しレコード店、ABBA、豆腐ちゃんぷるう、ブーゲンビリア……。と繋がる。流れる雲を見ているように、いろんなものや情景がつながって浮かんでは流れていく。
今日はそんな日だった。暑かった。
あなたは音楽の時間にトライアングル担当したことある?あれって、タイミング簡単そうでむずいよね。あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。