私だけが気づいてる光景(#183)
天気がいいと、毎朝うちの台所の窓から見える光景。暖かく・楽しく・気分が上がる光景。
曇りや雨の日には見ることができない。なぜなら、太陽の光とそれを受けてできる影がないと見れない光景だからだ。こちらの窓から車を縦に3台分くらい離れた向こう側に、同じようなキッチンの窓がある。レンガ造りの壁に上下左右合わせて六つのキッチンの窓が見える。その壁全体の上半分が朝日を浴びて輝いている。下半分はこちらの建物の影で暗い。レンガの壁に反射する朝日は暖かく・眩しく・それだけでも十分気分が上がる。
その時だ、ぴょんぴょん跳ねる影が目に入った。「あいつだな」と思う。うちらのビルの屋根に毎朝やってくる鳥だ。
階下に鳥おじさんが住んでいる。名前も知らないし、話したこともない。しかし、彼のベランダに、いろんな種類の鳥たちが、朝夕2回集まる。実際に餌を与えているところを見たことはないのだが、なんらかの形で、鳥たちはごはんをもらっているはずだ。じゃないと定期的に集まったりはしない。
鳥が集まると、その糞やなんかで問題が出るので嫌がる隣人も多い。だからおじさんは「知らんふり」を装ってごはんをあげているのかもしれない。私は鳥好き・動物好きなので、ごはんあげているとしても・文句は言わない。ニコニコ遠くで見ているだけ。しかし彼がお隣さんだったら困るだろうな。鳥が集まるたびに、うちのオカメインコがびっくりしてパニックで部屋をぐるぐる飛び回るかもしれない。
そうやって集まる鳥たちの1羽なのかどうか知らないが、必ず毎朝、この1羽が上下に軽くジャンプしながら屋根を歩き回っている。実際の鳥の姿は見えない。壁にうつる影の動きを目で追うのだ。まるで小さな子供たち・小動物たちが、機嫌よく理由なく跳ね回るように。こういう動作は小さい生き物に共通したリズムだ。つい、見てる私もその「跳ねる」に合わせて心が躍る。何かいいことが起こりそうな気がする。
クスクス
久 久
久 久
クスクス
ちょうど真向かいのキッチンの窓に男性が現れた。朝食のコーヒーをいれてるのかもしれない。彼は気づいていない。いま、何度も踏まれていることを。その影を。機嫌よく理由なく跳ねる鳥の足で、ピシパシ顔面マッサージを受けていることを。
私だけが、天気の良い朝に見てる・気づいている光景。今日もいいことありそうだ。
クスクス
久 久
久 久
クスリス
あなたが近所で見かける楽しそうな生き物はなんだろう?あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。