アフリカ引き出し(#160)
毎日バラの絵を描いて今日で3388日目になる。4桁の日数になるともう意味わからんでしょう?まあ、9年過ぎたくらいだ。
きのうバラのこと書いたので、続きをもうちょっと書こう。9年前のことを思い出そうとしても忘れていることが多い。だから、いろんな人にいろんな質問されても、その時思いついたことを適当にみつくろって答える。正直にわからないという時もあるし、顔の見えないコメントの形で質問されると、無視する。
いつか、ちゃんとした形で説明したいなと思うが、これがその文章ではない。これは、その前のストレッチ運動のための、さらにその前の動きやすい服に着替える、という段階だと思って欲しい。
まず「なんでバラだけ描いてるんですか?」「バラ以外の花の絵も見たい」などのコメントがくる。その質問者の気持ちはわからんでもない。
答え
1. 「今日はなに描こうか」と考えたくない。そういうタイプの絵ではない。
2. バラは年中どこでも手に入る花。
3. バラは枯れてもドライフラワーとして形を保ってくれる。ユリとは違う。
まいにち何かのためにトレーニングしている人はきっとわかる。ピアニストが「スケール・アルペジオ」で指を温めるとか、スポーツ選手がストレッチやランニングするような感じ。あれです。だから、何を描こうか考えるのに時間やエネルギーをかけたくない。
じゃあ、なんでそれをいちいちSNSに投稿するのか。
1. 毎日何かを続けている人に励まされたので、私もお返しできたらいいな。
2. 私自身が毎日描いていることを私の生徒さんに伝えたい。
3. 今日、産まれた命を祝福したい。
他にもあるけど、3つあげるとしたらこんな感じ。
まいにち同じような絵を描いて・まいにち投稿している人を何人も私はフォローしている。だからと言って、まいにち見てチェックしているわけではない。時々見ては「お・今日もがんばってるな。オイラもがんばるでな」と勝手に励まし合っている。コメントもほぼ書かない。いいねボタンさえもクリックしない。だから、きっと私みたいな「サイレント閲覧者」が私のバラの絵を見ているだろうと想像する。その人たちが何らかの形でポジティブな気分を得られるのなら、願ったり叶ったりだ。
イギリス人のマイケル・ノブズさんにだいぶ励まされた。彼は若い時から慢性疲労症候群(ME/CFS)があって、毎日できることが限られている。自分と同じような境遇の人に向けてポッドキャストでメッセージを毎日配信したり、iPadで描いた絵をときどき投稿してる。
もううろ覚えなので、それを前提に聞いて欲しいのだが、ある日のマイケルさんの投稿内容が印象的だった。それは「10個小さいことをする」というものだった。机の上にある輪ゴムとか、ペーパークリップ、ちび鉛筆とかとにかくそういうものを10個集めて並べて、それをあるべき場所に片付ける。という作業だった。まず、こういうどうでもいい小さいことを「プロジェクト」として認識すること、そしてそれをひとつひとつやり遂げること。そうするとちゃんと「達成感」が得られるのだ。そして、それを世界中の他の人たちもやっていると思うだけで、なんか楽しくなる。
モチベーションを保つとはこういうことなんだ、を学んだ。正確にいうと、私はそのことをすでに知っていた。それをマイケルが「ちゃんとしたプロジェクト」だと再認識させてくれたわけだ。
長期入院中、私は自分の身体を思うように動かせなかった。手が届く範囲に大事なものを置いておくとか、そういう小さなことがとっても重要だった。ベッドのすぐ隣にある引き出しが、アフリカ大陸のように遠く感じた。いつか自分でアフリカ引き出しを開けて、そこから手帳とか取り出せたらいいなと思っていた。それまで、自分の手の届くところに、自分の必要なものを置いておくのが私の毎日の「プロジェクト」だった。身体が回復するにつれて「手の届く範囲」が徐々に広がっていった。その喜びを今でも覚えている。
まいにち描くバラの絵の話に戻ろう。
私がまいにちバラを描く気持ちは、こういう地味で大切で自分の成長を助けてくれるものの上にある。「見て見て、私の絵すごいでしょう」というトーンではない。
あなたにとって「アフリカ引き出し」=いつか手が届いて自分で開けたいものって何だろう。え?「南極引き出し」持ってるの?すげ〜なっ。あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。