
ハエ叩き(#132)
文章を書くことはハエ叩きに似てる。ここ数日間、それを感じ続けている。うるさいハエをつかまえる時、動き回る必要はない。ハエは同じルートを飛び回る。こちらにやってくるのを待って、息をとめて、素早く「叩く」落とす。1回でしとめることはほとんどない。運動神経の問題というよりも、メンタルの問題だ。しっかり叩き落とすイメージがつくれていない。どっかで「かわいそう」という思いがあって、叩き逃してる自分をイメージしている。こんなんじゃダメだ、いつまでたっても仕事が前に進まない。さあ、覚悟を決めて叩き落とすんだ。4〜5回目でなんとかしとめられる。あるいは窓の隙間から逃げていって、ほっとする。
それと文章を書くのはどこが似ているのか。「タイミングをとらえる」が似てるのだ。「それ」は同じルートで巡っているように思える。そして私の前に来た時に、スパッと叩き落とすのだ。それを拾って私は大事に自分のノートに貼り付ける。
私のアイディアノートにはたくさんの名詞・動詞・文・文章が並んでいる。「書きたいことリスト」だ。でもそれらは「それの影」であって、「それそのもの」ではない。だから、時間があるからといって私はその影を使って文章にすることはできない。そう簡単ではないのだ。無理やり文章にすると「自分の文章」ではない気持ち悪いものになる。
まいにち、それなりにまとまった文章を書いて投稿することの目的のひとつに、自分の「成長の記録」がある。だから、今の自分が文章を書くにあたって何に困っているのかを書いておきたい。そう、私は困っているのだ。書きたいものはまだ山ほどある。でも「それ」をタイミングよくつかまえることができないために、書けないでいる。ちょっと前までは、1日の終わりまでにはなんとかつかまえられた。それが最近はつかまえそこねている。
昨日のことだ。朝、お絵描きの個人レッスンするお宅へ向かっている運転中に「それ」が前にあらわれた。ハンドルを握っている片手をあげて、平手打ちして落とす。「捕まえた!」それは助手席の上で、ピクピク動いている。どうか・そのままそこにいてくれ、次の信号で停まった時に拾い上げるから・・・。信号で停まる。私は慌てて「それ」を拾い上げて、目の前に設置したスマホに放り込む。そしてディクテーションで文章に綴っていく。涙流して感動するほど素晴らしい文章が書けていると感じる。ああ、このまま信号が1時間くらい赤であって欲しいと思う。
問題は、だ。午後になって、あんなに感動して書いた文章を読み返すと、全然思っていたのと違う顔をしている。どういうことなんだ。私はどこで道を間違えたんだ、と思う。もう「それ」はない。「それの影」でしかない。
どう分析したらいいのかわからないが、ひとつ言えることは、今読んでいる「私を離さないで」の世界に私が没頭していることだ。自分が入り込んでいる物語の世界と書いている文章の温度差の問題かもしれない。これも記録しておこう。
あなたがイマ没頭している世界はどんな世界だろう。あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。
