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人口減少時代の文化施設

こんな記事を読みました。

「博物館大国」と言われる日本ですが、首都圏(というか東京)に魅力的で人気のある美術館や博物館が集積している一方、地方では集客減に苦しんでいます。
この記事の著者はその解決策として
①人々と社会的に関わる展示をする
②新たな機会づくり
の2点を提示しています。

文化施設を維持できる人口とは

いったいどれくらい偏在しているのか?と思って調べたらこんな感じ。

国土交通省「都市・地域レポート2008」より

わかってはいますが圧倒的です・・・。
東京は人口がそもそも多いので、美術館・博物館を維持できる都市規模というのがどのくらいなのかということも気になりました。
これも国土交通省のデータがありました。

国土交通省「国土のグランドデザイン2050」参考資料[1](2014)
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000043.html
赤枠筆者追記

人口7万2500人の都市であれば美術館・博物館の存在する確率は50%、22万5000人の都市であれば80%、というデータになっています。
ではその規模の自治体はどれくらいあるのか、というのが下の赤枠部分です。自治体の数だけ見れば、美術館や博物館のある都市のほうが少ないということになります。
これからどんどん日本の人口は減っていきます。
展示や集客の工夫はもちろんのこと、一つの施設を維持するためのコミュニケーションの射程エリアを広域的に設定することが求められていると思います。

音楽ホールの状況も同様です。
先日視聴した劇場、音楽堂等連絡協議会のオンラインイベントでは、「劇場圏」という新たな概念の提示がありました。まだ論文などは出ていないようですので、今後注目したいと思います。

文化は町を活性化する

人口の少ない町に美術館・博物館が必要ないかというとそんなことはないと思います。
経済学者のリチャード・フロリダは「クリエイティブ資本論」を提唱し、新たな経済支配階級である「クリエイティブ・クラス」は、多様性があり、文化とアイデアが沸き返る場所を好み、住む場所が文化的であることを重要視する、としています。
現状では東京圏に文化もクリエイティブクラスも集積し、その創造性に触れたくてより人が集まり経済も活性化する・・・という循環になっているのかもしれません。ですが、コロナ禍で人ごみに疲れ、地方移住を検討する人も増える中、どの町を選択するかと考えたときに、感性を刺激するヒト・モノ・コトがあることは、クリエイティブな人たちにとってプラスポイントになるはずです。そうした人たちが集まれば、地域の価値を高める新たな動きが出てきそうじゃないですか(実際ありそう)。

たとえば瀬戸内国際芸術祭は、人口減少と高齢化という課題を抱えていた地域をアートにより活性化させました。前回2019年の経済波及効果は180億円と言われています。若いボランティアも日本中から参加し、生き生きと活動している様子が発信されています。

自分の仕事のフィールドは音楽ですが、文化が町にあることで、人を惹きつける、まちの魅力になる、それが実感できるようなコミュニケーションを考えていきたいです。実際に、うちの施設があるから転入を決めました!なんていう来場者からのアンケートも拝見することがあります。こういったことをもっと可視化するとよいのでしょうね。

だらだら書いてしまいましたが、冒頭のYahooニュースをきっかけにネットで調べものをするうちに、人口減少時代において、文化施設(をプラットフォームとする文化活動そのもの)を支える人口を作るコミュニケーションとはどうあるべきか、というところに行きつきました。
今後も考えたいテーマです。

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