蟹さんの愛
ホロスコープ第4弾の絵が完成した。
ゆずさんのものだ。
ゆずさんは教育関係の本を出版している有名な人。
そんな彼女がホロ絵を申込んでくれた。
さてさて、どんな作品ができただろう、か。
ゆずさんとのやりとりは
目隠しをして吊り橋を渡るような感じ
だった。
一歩間違えばお互い谷底。
メールを送ったり受け取ったりするたび、ぎゅうううううという音がきこえたり、横から風が吹いてきた。
ゆずさんは道中何度もボロボロ泣き出した。
げえええ
げえええ
酔ってもいた。
生きてきた中で押し込めていたものも一生懸命吐き出していた。
価値観の崩壊。
他者の考えへの不信感もあったかもしれない。
自分がこの世に存在している価値とは?
なんでなんでなんで。
ぐるぐるぐるぐる。
ごめんね
ごめんね
ごめんね
何度も思った。
ゆずさんは蟹さんがきいている人だから…こうするしかなかったんだ。
甲 羅 割 り し か な か っ た 。
ワタシは月に蟹があるから蟹人の気持ちはわかる。
甲羅は硬い。しゃれにならないほどに。
ごめんね。
痛いけどごめんね。
ゆずさんの殻を無理やりこじあけたあと、ワタシの方は自分の殻にこもった。そして、とにかく待った。
時期が来た。
ワタシは殻からにょきっと出た。手にはいつものものを持って。
どぼどぼどぼどぼどぼどぼ。
更に彼女にめいおう液をかけにいった。
自分は鬼だとも思ったが、手はゆるめなかった。
そして、ゆずさんはさらに泣き崩れた。
しかし、泣き崩れたゆずさんからでてきたのはこの子だった。
アセンダントと太陽、月。
この3つはその人のなりや癖、思考をあらわすと言われている。
ここに蟹がある人はファミリー思考なんだ。
家族が大切。誰よりも何よりも。
自分のことはさておき、家族を考えて行動する場合が多いし、家族に囚われもする。
ゆずさんはそんな人。
「ゆずさんも殻から出てきた」
「優しい子だね」
「ゆずさんの愛情はご家族がきっちり受け取ってくれるよ。特にお子さんたちはいずれもママからの愛情を欲してる」
「出していいんだよ」
最後にそう伝えた。
これ・・・蟹さんにしかわからないんだろうなともちらっと思った。
人の愛情や矛先ってそれぞれ。
皆が皆、同じ方向には向かわない。
たまにすれ違う。
母と子の絆もそれぞれ。
家族の捉え方もそれぞれ。
深くても良いじゃないか。
蟹の愛は底なし沼。すごいのである。