今月の1冊~2021.03
3月。今年の桜は早かった。ハナミズキも早かった。日々忙しさにおぼれそうになっているせいもあるけれど、すこしずつ全体のスピードも上がってきているのかなと思ったりもしています。だいたい私、3月好きじゃなかった。いろいろ区切りつけたり、新調したりして。今日と明日は連続しているのに、パツンとしてしまう感じとか、暖かいと油断して寒いおもいをするとか。そんな揺らぎの3月には、揺らがない本と出合えました。
読む本は数あれ、ぐっとくる1冊にはそんなに簡単に出会えない。
そんな中でも毎月1冊もしあれば2冊、自分のなかでこれは・・と思ったものの感想を書いていこうと思います。
本の要約ではないと思うので気になる方は是非ご自身で読んでください!
今月は
なぜ科学を学ぶのか 池内了
この本は、なんと中学受験でいちばん引用された本です。ちくまプリマ―新書の1冊なのでやさしく科学のことについて書かれています。ただこれ、大人が読んでもとてもわかりやすくて良いです。そんなに引用されているなら、と手にとったのですが生き急いでいると忘れそうな勉強することについての原点がここにかかれています。でもこれ小学生が読むにはちょっと難しいかも。実際にやってみてはじめてわかるという意味では、中学生とかになってもう一度読むと良い本なのかもしれませんね。
そもそも科学とは何者なのか?から話ははじまります。
科学は、
① 仮説を提案する
② 実験・観察を行って仮説を検証する
③ 過不足なく検証できれば法則として採用する
と、池内さんは言っています。わかりやすい~
別に理科を勉強しても、直接役に立つことばかりでもないし、「いざ」というときに勉強すればいいよねという考え方もあるよねという意見に対し、「いざ」という時に思い出すこともあるよね、勉強に対する姿勢を学ぶこともこれからいろんなことを実践していくうえで大切だよね、とていねいに説明をしてくれています。あと、「学ぶ」ことに欠かせないちょっと自分が豊かになっていくよねということにも触れられていました。
そしてシンプルな科学の定義のあとに、これまでの人間の歩み、そこから得られる光と闇についてもていねいに記述してあります。もちろんこれまでの積み重ねは大事にすべきものであるということを伝えながら、そこに隠れている失敗のはなし、そしてその失敗は表にはなかなかでてこない、数字をどうとらえていけばよいかは、科学ではない理論も必要、時には弊害さえもあるといった、いろいろな見方を教えてくれます。科学が良いというよりも、科学的に考えることで、これまで見えないことがみえてくるという考えることの本質をわかりやすく説明してありました。本当にその通り。絶対がない中で、どうするの?に立ち向かう勇気を教えてくれます。
小さいときって、誰が教えたわけでもないのに、この科学するということができているなと感じています。あの、なんで~なの?という無邪気な質問は、日々の体験からの仮説とちがうから発されるもので、そしてそれを人に聞くことで検証していく。それで納得すればあらたな知識として蓄積していく。その繰り返しなのだろうなと思います。それが、だんだん「学ぶ」という高度なものになっていってちょっととっつきにくかったり、自分で体験しづらかったり、時にはそこに興味がなかったり(でも知っておいたほうがよい)みたいなことだから科学自体が難しいものであると捉えられてしまうのかなと。でもこの難しさに向き合うから、日々のどうする?をあきらめずに考えられるのですよね。間違いなく。
受験なんて結果はゼロかイチかしかないし、それがすべてにはなってしまいますが、その過程で得るモノはその後の人生においてとても役立つものである。受験でこの文の引用がたくさんあるのがちょっと皮肉にも感じられてしまいますが、結果をだしてみるのもひとつの挑戦ととらえて大きくなっていくのでしょうか。学ぶとは、ということについて科学的に考えられた1冊でした。