音のない世界
あえて音楽を聴いたり、テレビやラジオを付けていなくても、現代人は何らかの音にさらされています。
今でしたら、エアコンとか扇風機の音、いる場所によっては車や自転車が通過する音、風や雨の音など、気にはならないものの、そちらに少し思いを寄せると聞こえてくるものがあります。
また文字通りの騒音ではありませんが、情報という名の洪水に今にも押し流されそうになるくらい、私たちは絶えず何かに取り囲まれています。
それらの「音」は、これからのことをじっくり考えたり、これまでのことを見つめ直したりする上で、妨げになる時もあると感じます。
あえてそれらの「音」を全てシャットアウトするとどんなことが起きるのか、感じるのか、アメリカの原風景とも呼べる場所で体験しました。
まっすぐな道路の先に
アメリカはアリゾナ州とユタ州にまたがる、実際はナバホ族居住地域にある有名な「モニュメント・バレー」がそれです。
本当は、このエリアのすぐそばにあるホテルに泊まって朝日や夕日を見たかったのですが、予約できなかったので、一番近い街カエンタに宿を取りました。
近いといっても、40㎞強くらいの距離でしたが。
レンタカーでエリアに入場してビジターセンター駐車場に駐め、ビューポイントから辺りを見回しました。
「これこそ That's America」というダイナミックな風景でした。
バレー内も車で入ることはできるのですが、どう考えてもオフロードなので、4WDではないレンタカーでは危険と思い、ツアーを利用してバレー内を見学しました。
有名な「ジョン・フォード ポイント」を見学し、さらに奥まった所へ案内してもらったところで、少し散策させてもらいました。
空気の動く音が聞こえる?
ビュートと呼ばれる岩山を背に、地平線が分かるくらいの何もない原野を見て感慨にふけっていました。
その時です!!
周囲の雑音がまるでなくなりました。
空気が少しずつ動いているような音だけが聞こえたような気がしました。
無風状態だったのがそう思わせたのでしょうか。
人間は大自然の一部なのだ、ということをしみじみ感じた瞬間でした。
自分が少しだけですが、より素直になれたような気もしました。
後で傍にいた妻にも聞いたのですが、「空気の流れるような音なんて聞こえなかったよ」ということでしたので、自分の思い違いだったのかもしれません。
でも、音がないということが、こんなに素晴らしいことなのか、と感じたのは事実です。
雑念がなくなっていくとは、正にこのことなのでしょう。
この経験を通して、ライフワークやプロジェクトなど、人生において大切なことを深く考える時には、少なくとも音を切り,画面を消し,大きく深呼吸をして雑念を吐き出してから臨むのが大事だなぁ,と思いました。
旅を人生に重ねる人が多いですが,この経験は自分にとってそれを思い起こさせるエピソードでした。