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あまねく空が見えた気がした_『ミュゲ書房』を読んで

最初、この本を知ったのは何だったのか。
たぶん、アマゾンにおすすめで出てきて、
表紙の感じがすごく好きだと思ったことと、
星がたくさんついているな、と思って、
カゴに入れたのでした。

でも、はじめての作家さんだったし、
たまたま他の本を買って予算がオーバーしてしまって一度カゴから外したら、そのままなかなかレジまで行きつかなくなってしまっていました。
それがいきなり
「あ、ミュゲ書房買おう」
と思ったんです。なんででしょうね。
そして届いてからも、しばらく積んでしまっていたのですが、
ついに読み始め、読み始めればあっという間でした。
(きっと作中に出てくる永瀬桃ちゃんだったら1時間で読み終えてしまうでしょう。面白くて)

とくに半分を過ぎてから、お話が転がっていくともう止まりたくなくて、
夕飯の支度をはじめるのが少し遅くなってしまいました笑

このお話は、『カクヨム』で連載されていたものを書籍化したものだそうです。
帯に書かれていますが【人も、物語りも、再生する】物語でした。

主人公の章さんは、大手の出版社で編集をしていました。
しかし、
その出版社が運営している小説投稿サイトで、小説を投稿している広川蒼汰というアマチュア作家の才能に気付き、
その小説をサイトで募集している賞の大賞に押します。
その甲斐あってか、作品は大賞に輝きますが、
作品は本になることはありませんでした。
それどころか、大手の出版社であるが故の出来事の積み重なりで、かけがえのない才能を摘み取ってしまったのです。
章さんは責任を感じ、辞表を提出します。
同じころ、北海道に住んで、司書をしていた祖父は定年後、祖母とともに試行錯誤を繰り返し、彼らのこだわりと愛情をふんだんに注いで小さな書店を開いていました。
その名前が『ミュゲ書房』。フランス語で『すずらん』のことです。
しかしそれを続けることは困難で、
祖父と祖母の死とともに、
その書店も閉めることになっていました。
ちょうど仕事を辞めて時間の余裕のある章さんが閉店作業をかってでることに。
ひとり、思い出の詰まった店内を見ていると、
思わぬ客が次々と現れます。
高校生の永瀬桃さん。カフェ部分の担当だった池田くん。庭の手入れをしてくれていた菅沼さん。そして祖父の読書仲間だった副市長の山田さん。
彼らを筆頭に、閉店までミュゲ書房には人足が途絶えることなく続いたのでした。
みんながこの空間との別れを惜しんでいる。
そんなことを日々感じていた章さん。
そしてついに最後の日がやってくるのですが、
そこに思わぬ知らせが飛び込んできて___

やさしい文章でつづられていく、
北海道の素敵な個人書店が本当に魅力的で、
こんなところ近くにあったら、、、、と読みながらうっとりしていました。
表紙も凄く素敵ですよね。
文庫になっても、この表紙でいってほしい。

前半の書店を継ぐことになってから、お店を整えていくという部分は、
面白いながらにじっくりと読めたのですが、
後半の出版の話に重きが置かれ出すと、もう止まりませんでした。


ちょっとネタバレします。





お話は、大団円で終わります。
それが本当にいい大団円で、
逆にこれ以外の終りだったら悔し泣きをしたかもしれません笑
ミュゲ書房のみんな、そして副市長の山田さん、そこから広がっていく様々な人たち、そして後半の“広川蒼汰”の“幻になりかけたデビュー作”作りの過程、丁寧でやさしい物語で、全然泣くところではないのに、涙が浮かんできました。
たぶん、私は読書をしいている楽しさに打たれたんだと思います。
本当に素敵な一冊でした。

もし、読もうか迷っている人がいたら、
絶対に勧めたい一冊です。

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