見出し画像

山崎佳代子さんの講演を聞いて

これはある日のこと。


山崎さんは、
詩人であり、翻訳家であり、エッセイなどの執筆もされていて、
只今海外を拠点に活動している方です。

目の前に立たれると、
他の人たちからふっと立ち昇る白のような方でした。
ピントがどうしてもあってしまう、焦点を引き寄せる方でした。

彼女は、
どんな形でも詩は在り、生まれ、それが何かに波紋を起こしていく、
ひとの心に、良き作用を押し寄せていくもの、
それが詩なのではないかしら、と。
そういうお話、を聞きながら、
私ははじめて講演を聞きながら自分の詩を書くという行為をしました。
音楽での心の震えを詩に書くことは在りましたが、
誰かの話を聞きながら、自分の淵を覗くという行為は、
なんだかその場にいるひとたちの魂の細い繋がりを行き来するようで、
神秘的な、音が声だけになるような、いい体験でした。

その講演のおわり、
エレベーターに一緒に乗った方が、
「今、心の中にある言葉が全然だせないのです」
「でも、今日の講演を聞いて、何かが動いた気がします」
とお話されていて、
「大丈夫ですよ、必ず出て来てくれますよ」
と応援をこめて言葉を重ねた私に
「ありがとうございます」
と笑ってくださいました。

空は鱗雲を薄く刷け伸ばしたような夕暮れのはじまりでした。

人と話をする中で詩を書く。
それは本当に魂が近くうつるような経験だったのです。

山崎さんのその場で売っていた詩集の三冊は全部買い、
帰り道の電車はそれを貪るように読みました。
誰かにこれを広めたい気がする。
私に寄せた波を、
誰かが受け取ってくれたらいいなぁと。
あと一冊は家でゆっくり読む予定です。

いいなと思ったら応援しよう!