希望は結局生きてる方に置いていかれる
実写映画しますよ、と知ってから、ずっと見たかった映画。
アマプラで配信が開始したので、見ました。
原作が好きで、
原作の漫画を読んだときから
「ああ、これは実写で映画とかなりそう」と思っていました。
やっぱりな!です。
お話は、
ブラックめな仕事をしているシィちゃん(永野芽郁さん)は、
昼食に入ったラーメン屋のニュースで親友のマリコ(奈緒さん)の死を知る。
携帯に連絡をいれるけれど、
やはり既読にはならず、
仕事にも身が全く入らない。
彼女は自殺をした。
幼い頃から、彼女を殴り続けてきた現実は、今も彼女を殴り続けている。
実の父親からの身体的にも、女性としても、精神的にも、殴られ続けてきた彼女を、救うことはできなかった。
せめて、今彼女にできることは、、、、
そう考えてとったシィちゃんの行動は、
マリコの骨をあの父親から奪うことだった。
最初、永野芽郁さんが擦れた雰囲気のシィちゃんを演じると聞いて、あうかなと思っていたのですが、マリコのことを知って職場の喫煙所で煙草を吸っているシーンの座り方を見て、「めっちゃシィちゃんだ」と納得しました。
ここから、映画後半の流れを書きつつの感想を書きますので、
ネタバレします!
マリコは学生の時、何通もシィちゃんに手紙を送ります。
それは他愛もない言葉が並んだ、
それだけを見れば全く家庭で虐げられている少女のものではないような気がします。
まるっこくて、可愛らしい言葉たち。
けしてシィちゃんに「たすけて」とは言わないのがマリコでした。
たぶん、自分の価値を捨ててしまっていたのでしょう。
たすけてもらう価値はない。
そんなことは別にいい。
自分は壊れているから、どんな扱いをされても仕方ない。
仕方ない、と思わないと、今までのことの全てを負いきれない。
そう思っていた彼女の、唯一の“声”があの可愛らしい手紙たちにみえました。
または、あれが彼女の差し出す、シィちゃんへの一番伝えたかった感情なのかも。
シィちゃんは、
骨を奪って、
昔マリコが行きたいと言っていた海を目指します。
その道中、彼女との思い出が、夢になり、幻になり、シィちゃんの中を巡っていきます。
それはとてもいい思い出とは言えないようなものばかりで、
思わずシィちゃんも「今こんなこと思い出さなくても」と言うくらい。
だけど、きれいな思い出が光つよく彼女を訪れると、
シィちゃんは怯えます。
「あんたのきれいなところしか覚えていなくなったらどうしよう」
そう言いながら。
すべて、覚えていたいのに。
飲み屋のおじさんたちに喚き散らしながら、
彼女が罵っているのはマリコと自分だけのように見えました。
彼女の骨を持って、目当ての岬に立ったシィちゃんに抱き着くマリコ。
彼女にシィちゃんは怒りが湧きます。
「シィちゃんに彼氏ができたら私は死ぬから」
そう言って目の前で手首を傷つけてみせる思い出の中のマリコ。
そんなに自分を必要と本当にしていたのなら、
「いっしょに死んでって言ってくれたら、死んだのに」
そう言って泣き崩れるシィちゃんは、
すぐ立ち上がって
「腹が立った!
骨を海に撒いてなんてやらない!
そこで親友が死ぬのを止められないのをみてろ!」
と叫んで飛び降りようとします。
それを色々あって関りのできたマキオさんが抱えとめます。
揉み合う二人のもとに、
そばの背の高い叢から女性の悲鳴が聞こえます。
走って来る女性の後ろから、フルフェイスのヘルメットをかぶった男が追いかけてきます。
シィちゃんの目には、その女性がマリコにうつります。
「たすけて」
ずっと待っていた言葉。
それさえ言ってくれたら、自分は全身全霊で彼女を守っただろうに。
(それがあまりに無力な少女のころであっても)
シィちゃんは、マリコに、好きだと言い募られても、纏わりつかれても、結局助けを求めはしないことに、ほっとしながらも絶望していたのかもしれない。
その溜めに溜めた後悔が、彼女を突き動かした。
この場面までは、ぽろぽろと落ちる程度だった涙が、
マリコの「たすけて」を聞いた瞬間決壊したように溢れていきました。
嗚咽が漏れるど、一瞬で顔がびしょびしょになりました。
マリコの骨壺で男を殴りつけたシィちゃん。
骨壺からこぼれて落ちていくマリコの骨の白い粉が、
きらきらと舞っている様子はとても美しかったし、
それを追いかけながら胸で思うシィちゃんのマリコへの気持ちが本当にきれいでした。
浜辺で塩水と砂まみれで気が付いたシィちゃんを見下ろして、
マキオさんがいう「大丈夫そうですね」がとてもいい音でした。
「大丈夫そう」という信頼が、
ちょうどいい距離で、
だからこそ自分で立ち上がれる自信になる。
二人の別れの時。
駅のホームでお弁当を渡すマキオさん。
それを受け取って電車に乗った途端お弁当を開けて、まさに“かっ食らう”様子のシィちゃんが素敵でした。
マキオさんの言う、
死んだ人に会うには、結局生きていくしかない、という台詞。
それに深く頷きながら、
きっとシィちゃんはこれからも図太く生きていくのだろうなと、
やっと引きはじめた涙を払いながら思いました。
正直、最初の方の、骨壺を抱えてマリコの父親の部屋から飛び降りる場面は、漫画の方がリアルに見えました。
これが漫画と映像の違いなのだろうな、と思いつつ。
でも、実写になったからこそより胸に迫った場面もいくつもありました。
本当に素敵な実写化だったと思います。