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春霖

君が見る陽の目が、蕾の先が私では無いと、それを知ってどれ程恨んだことでしょう。
その射し込む輝光が、花弁の一枚が、いつからこんな酷い思い違いをするようになってしまったのか。
到底私の口からは、君の仕業とは言いませんが…
白鷺が水音を残さぬように、私も清く、飛び立ちたい。
そろそろ春になります。
冬に渡れず、季節を越した私には、幼子たちの開咲の声を聞くことはできるでしょうか。
君の心も、柔らかな温もりだけを見ることは叶えてくれますか。
それを私だけにとは言えません。
どうかどうか、忘れて下さい。
私の想いは軽々しく、種を結んで、飛んでいくことにします。
それでも優しい君ならば、躙り踏みはしないでしょう。
そこに縋って、再び目に逢って下さるのなら。
待っていてはくれませんか。
必ずや、君の輝きに添える花になりましょう。
だから摘まずにお待ち下さい。
それとも枯れを望むなら、落ぶる私を躙るなら、いっそ風に吹かれましょう。
枯木に花は咲きません。
焦燥の彩りは一度だけ。
君の恵みに自惚れます。

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