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魔王に救われた|小説感想「スモールワールズ」一穂ミチ

ベッドに入り、Audibleのタイマーをかけてイヤホンをする。
眠りに落ちるまでの読書習慣。
そこで出会った本について。

一穂ミチ「スモールワールズ」

ツミデミック」で直木賞を受賞された一穂ミチさんの短編集。

気になっていたけれど、読んだことのない作家さん。
ツミデミックもAudibleで聴くことができる。けれど、まずは短編集を聴いてみようと再生した。

不妊に悩む女性。姉と弟。被害者の娘と受刑者。突然一緒に過ごすことになる父と子。孫が生まれた女性。先輩と後輩。
6編のストーリーは、別々に完結しているようで、少し重なっている。

表紙から穏やかな話を想像していたけれど、1話目で衝撃を受けた。

1作目の「ネオンテトラ」は、思いがけない結末だ。普段、イヤミスもよく読むけれど、この結末は今までの読書経験で上位に食い込むくらい、受け入れ難いものだった。(グロテスク表現はない)

もしかしたら、この作者さんは苦手なのかもしれない。そう思ったけれど、続く「魔王の帰還」は登場人物もストーリーもガラッと変わった。

面白かった。

「魔王」こと、豪快でいつまでも岡山弁の抜けない、大きくて正義感の塊のような姉がいなかったら、この本を最後まで読みきれなかったと思う。

彼女の選択は、苦しさも伴う。けれど、どうか幸せであって欲しい。そう願いたくなる一編だった。

受刑者と文通をする「花うた」は「アルジャーノンに花束を」を思い出しながら読んだ。最後まで結末が予想できない、きれいな物語だった。

ゾッとしたり、温かくなったり、読み切るまでわからないハラハラする1冊だったけれど、読んで良かったと思う。魔王に感謝しなくては。

思いがけないようなストーリーが、いつも世界の何処かで起こっていて、それはパッと見ても、わからない。そして少しずつ、繋がっている。


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