夜からの手紙【毎週ショートショートnote】
夜の海辺で一人の女性が涙にくれていた。
大事な恋を失くしでもしたのだろうか。
月明かりに光る涙を見た夜は、その女性に恋をした。
毎晩海辺へ現れる女性に気持ちを伝える術はないものか。
夜は頭を悩ませた。
春の宵に甘い香りを流しても、夏に涼しげな風を吹かせても、彼女は夜の想いに気づかない。それならばと秋の虫に唄わせても、彼女の心には届かなかった。
やがて冬が来た頃、夜は考えた。
香りも風も虫の音も駄目ならば、いっそ手紙に想いを託そうと。
そうして夜は、空いっぱいに星を散り