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おすすめ映画:「三蔵法師・玄奘の旅路」
仏典を求める旅の果てに玄奘が天竺に達した後,若い男女に出会う。男性の名はガラワといい,仮面をつけさせられている。こんな暑い日になぜ仮面を?と玄奘が尋ねるとガラワは答える。
「奴隷ですから。この仮面は私の罪の印です」
ガラワは幼い頃孤児になり,遠くの村に売られて村長の奴隷になった。後に村長の家が火事になった。村長いわく「お前が私の娘に触れたせいで我が家に厄災がもたらされた。この奴隷め,人前に醜い顔を晒すな!」
しかも村長は「この災厄がもたらした不浄を清めるには,死んだバラモンと一緒に娘クマールを葬り去ってやる」と言い出した。そのときガラワはクマールを連れて逃げ出した。それ以降は放浪生活を続けていて,ただ生きているというばかりで心は死んだも同然と感じている。
それ以来,彼は仮面を外すことができずにいた。かくして「汚されてしまった」とされたクマールともども村を追われた彼は村外れの小屋を住処にしている。
玄奘:「どうすれば罪が解けるのか」
ガラワ:「バラモンの長老ならば罪を解けますが,望みは薄いでしょう・・・」
クマール:「ガラワは私を救ってくれた恩人です。どうかガラワを助けてください」
後日,玄奘は長老のもとへ出向き,慈悲の心でガラワの罪を許して欲しいと懇願する。長老が答えていわく,
「中国(唐)の法師の嘆願である。ガラワの罪を解いてやれ。ガンジス川で沐浴し十日後に仮面を外すがよい」
さて,現代の私たちは,災厄をもたらした張本人でもなく,いわれもないのにあたかも「罪人の汚名」を着せられたかのごとく,あるいは誰もが互いにバイ菌扱いしあうことを強いられながら二年以上にわたって事実上「仮面」を強制されてきた。それを外すのに必要なものは何か。深く考え込んでしまった。
この作品を観た後に般若心経に耳を傾けると,胸奥への染み入り方が尋常ではなく,涙があふれて止まらなかった。
一見の価値あり。