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星の自傷


血を流して星がたたずむ
数々の稜線を伝って
流れた跡が赤黒く固まる

星は誰もがみなしごで
数十億光年の空隙を
前後左右に保ったまま
怠惰に無意志的に発光する
おのずから光る役割のみを
誰かから託されて
誰が託したのかなんて誰も知らなくて
どうして光るのかも自分では分からない
戸惑うそぶりすら許されぬまま
星々は光りつづけ
恒星として登録されて
等級など付けられて

月明かりに目を覚まされたある観測者が
偶然に恒星の涙を発見する
ガスの滞留だと思われていた暗赤色の模様は
星の裂け目からどくどくと溢れ出て
その一部は
やわらかに瞬くフレアの狭間から零れる
透明な帯に希釈されたという

観測者たちは星の自傷を
天文学的数理モデルに置き換える
星の涙はぶあつい辞書の片隅で
走り書きのような記述に成り下がる

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