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戦場と楽園


救護
尖塔に突き立った太陽が
嬰児の目をひらいては
迷宮はあまねく圧し潰され
平面と化した後半生を
ユークリッド幾何学に奉仕する
ああ明視の空間
屈辱に似た透徹を
ガムのように噛みしだいて
くるんで捨てる紙が欲しいわ

簡明
背広を着た網膜が
警戒警備を振りきって
目白押す歓楽を感知する
焦点を放棄した彼は
全身に全霊を一致させて
感応体としての天分を全うする
ぐったりとうち萎れた神経回路が
部屋の隅で丸く絡まる

合議
器官の集合が
全身と一致することはないという命題が
まどろむ組織液を目覚めさせる
酸素を警護する血液を尻目に
うす黄色いめくらたちが
か細い無数の手をわらわらと延べる
細胞は微かな騒擾を一瞬の鳥肌に還元して
すぐさまその記憶を失う

形式
おのおのの受容体がさんざめく修辞を
花粉のように振り放ちながら
いまこの瞬間も
草原のようにざわめいていますことよ

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