見出し画像

世界の最果て


空想に耽る花曇りが
頭上でちぎれて消えたので
きみがたたずむその場所は
世界の最果てにちがいない

見知らぬ子犬が鼻を鳴らして
目の前を通り過ぎるのを
きみはだまって目で追いながら
野垂れ死ぬときを待つだろう

さびれた広場でミュージシャンが
声を限りに歌いつづけるのを
きみは遠くで聴きながら
彼の歌声がビニル袋と一緒に
道端を転がるのを見るだろう

妻を失った男が流れ着き
首をくくろうとするときに
きみは男の結晶化した苦しみが
みるみるほどけて軒先から天に昇り
星屑に変わるのを眺めるだろう

男は苦しみの消失に
ひどく絶望するだろう

そこは世界の最果てだから
きみが目撃するものは
脱ぎ捨てられた衣服のように
それそのものの姿となって
きみとともに永遠に
彷徨いつづけることだろう

そこは世界の最果てだから
この世のすべての最果てだから

いいなと思ったら応援しよう!