NHK短歌への投稿作・3月号
いつも同じ、毎回必ずこれをすると決めてしまうと自分が飽きてしまってしんどくなるので、選者の作品に限定せず、その方の選された作品やお言葉などからも引用したいと思います。自由に、ランダムに。この取り組みもいつまで続くかわかりませんが、なにか始めてもすぐやめてしまうのが私のあかんところであり、よいところでもあります。
選者:川野里子先生 題詠「光」
雲間より延びる光線あのなかを過ぐ鳥たちに光は見えず
朝は美人に見える鏡が夕方はそれなりとなる光の魔法
いちにちの境界線に野良猫ら朝陽へ顔を突っこみ寝をり
僕だけが集合写真のひだりうえどこにも存在しない向日葵
神奈川県 山田裕樹さん(5月号)
クラスには40人の敵がいて作り笑顔でひとり闘う
宮城県 宮川浩仁さん(5月号)
クラスって合わない人にとってはいやおうなく閉じ込められる牢獄みたいなもので、一年間逃げられない。場合によっては三年間……。山田さんは行けなくなって、宮川さんは作り笑顔で我慢してたけど心のなかでは闘っていた。40人の敵と同時に、もしかすると頑なな自分の心とも闘っていた、とも読めます。
どうしても、死にたくなるほど嫌なら行かなくてもいいと思います。学校なんて、行かなくても死にゃしない。世界の偉人にも学校行かずに自分の得意だけやってたら才能開花したって人います(親の理解が重要)。でもこれは私が大人になった今だから言えること。当事者の子供にとっては学校の存在って大きくて、学校=世界になっちゃってる子もいますけど、ぜんぜん違うからね。
学校、あるいは先生とか虐めてくる奴がいて死にたいほど嫌なら行かなくてもいい。無責任な言いようですが死んだら終わりやもん。「運量保存の法則」があります(大概の人間の運の総量は決まっている。もちろん例外もある。私の考え)。山田さんも宮川さんも創作に昇華した。いま辛ければ辛いほど、将来いいことが待ってる、かもしれないよ。
選者:山崎聡子先生 題詠「あこがれ」
「尊敬する人は誰です」両親と即答する君ら眩しすぎるよ
大好きな君は遠くで見ていようエベレストの表面ゴミだらけ
ああ焦がれ飯が食ひたし母さんが貧乏くさいとむかし言ひしが
さようならいつかおしっこした花壇さようなら息継ぎをしないクロール
伏せると影のようにも見える目をもってとおく昼花火聞いていた夏
山崎聡子
一首目、なんてまあ、かわいらしい!「尿」「ゆまり」はたくさんありそうですけど、「おしっこ」という言葉を歌に入れた歌人はそうそういないのではないでしょうか? 二首目もですが、色々読んでいて山崎さんの歌はわりと破調が多いと感じました。がちがちに固めるんじゃなくて、「おしっこ」を入れるところもそうですけど、表現したいことは定型はみ出てても言っちゃう自由な詩情が魅力的です。
選者:吉川宏志先生 題詠「ごめん」
絶対に謝らぬおじさん急にm(_ _)m付けてきた どうしたんですか
「ごめんね・・・」の女は酷い名曲かこれがと言ひぬページ繰りつつ
サルビアに埋もれた如雨露 二番目に好きな人へと君は変われり
吉川宏志
かなしい。しかし、仕方がない。この瞬間は誰にでも訪れます。「君」と色々あって、本当は一番のままなのに無理やりにでも「二番目に下がったんだよ君は」って自分に言い聞かせているようでもあります。その心情もわかります。サルビアが一番目、如雨露が二番目の彼女(君)、の暗喩でしょうか。けどなんだかサルビアの方が「君」に思えてならない。
選者:岡野大嗣先生 題詠「日記」
交換日記てきとうな絵だけ描いてくるいいかげん抜けたいらしい
連日の日記だんだん量が減りつひに一句となる良き句なり
⚫〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇⚫
2023年10月22日放送 東京都 文野やよいさん
特選です。へっ!? これ、特選にしちゃうのって最初は目が点になりました。すみません。しかしこの歌、見た目は奇抜だけど言ってることはすごく真面目。私は宣戦布告、決意表明と取りました。フリガナで小さく言ってるのはあなたに面と向かって言えない事情があるからなのか。一番上と下だけが黒丸。蓋をした心の下で静かに燃えている闘志を感じます。こういう歌を採る、しかも特選にしちゃう岡野さんの自由度がすごい好きです。
あいかわらず妄想、拡大解釈がひどいです。このようにしか書けないので仕方がないです(笑)。少し前に「先生」表記はやめますと書きましたが、復活させました。「さん」では、自分的にやはり座りが悪いなあ、と。選者への御礼コメントを色々読んでましたら敬意を表しての呼び捨て(浅田次郎を浅田次郎さん、とは書かない感じ)にされている方もいまして、こういうのもいいなと思うんですよ。先生でもさんでも、しっくりくる感じで進めていけたらと考えています。