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界のカケラ 〜47〜

 市ヶ谷さんは私のことを不思議な人だと思ってはいないだろうか。普通に考えればそんなことは信じることはできない。しかし私はこの数時間で信じることができないようなことを体験した。それが自信になったのかは定かではないが、自分が体験したことでないと声に説得力が出ないことは確かだ。この説得力が彼にも届いていることを甘い考えではあるが期待していた。

 「確かにそうですね。周りには私たち以外誰もいない。病院という場所なのに不思議です」

 少しだけ納得してもらえたようで安堵した。このまま私の流れに巻き込んで彼がまだ自覚していない本質の部分を引き出させなければならない。焦らず慎重に進めていくことには変わりない。

 「たぶん、私たちが思っていることより不思議なことってたくさんあると思います。

 例えば、何気ない会話からお互いの共通点が見つかったりします。それも一般的な趣味とか、好きな場所とかではなくて、同じ時期に同じ場所へ行ってすれ違っていたことをお互い覚えていたり。でもそれはきっと偶然ではないはずなのです。私たちにはわかりませんが、何かが作用して仕向けられたとでも言いましょうか。そういうことって私たちが自覚してないだけでたくさんあると思います。今回はそれだと思っています」

 「本当にそんなことってあるのでしょうか? 私には簡単には信じられません。だってそんなこと誰もわからないでしょう?」

 「ええ。ですがないとも言い切れないでしょう? わからないことだから意味がないということにはなりませんよ。わからないから考えるんです。なぜそれが起きたのかって。大概意味がないかもしれません。でもそうではないことだってあるはずです。心を閉じてばかりでなくて、自分で開いて見つけようとしなければ意味があるのかないのかなんてわかりませんから!」

 私はつい数時間前の自分の状態を引き合いに出し、さもいつもそうであるかのようなふりをして市ヶ谷さんに語っていた。

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