界のカケラ 〜71〜
そろそろ深鈴さんを元の肉体に戻さないといけない。最後はきちんと礼を尽くさないと失礼になる。私はゆいちゃんを呼んだ。
「ゆいちゃん、そろそろ深鈴さんを元の肉体に戻してあげたいのだけれど、その肉体まで付き添ってもらえるかな」
「うん、もちろん! そのつもりだったから。それじゃあ、深鈴さん行きましょうか」
「そうですね。四条さん、ありがとうございました」
「こちらこそ市ヶ谷さんのためにありがとうございました」
「どういたしまして。また会えたら嬉しいですね。それではまた。徹くんもバイバイ」
「お姉ちゃん、バイバイ!」
「それじゃあ、ゆいちゃんお願いします」
「うん。じゃあ送り届けてくるね。いってきます!」
「いってらっしゃい!」
深鈴さんは先ほどと変わらないほど深くお辞儀をしてゆいちゃんと共に遠くに離れていった。離れていくに連れて寂しくなっていったが、彼女が残していってくれたものを無駄にしないために市ヶ谷さんのアフターケアを病院のスタッフとともにしていかなければならない。休み中だけど、後で内科と精神科の先生と看護師たちの元へ行こう。ただ、この出来事のことを話しても信じてもらえないし、逆に頭を打った私のことを変に思うかもしれないから、ここは嘘も方便で市ヶ谷さんの様子を見せながら適当なことを話せばいいかと気楽に考えるようにした。
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