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雑感79:ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと

就活から逃げ出した言語学徒の青年は、美しい言語を話す少数民族・ムラブリと出会った。文字のないムラブリ語を研究し、自由を愛するムラブリと暮らすうち、日本で培った常識は剥がれ、身体感覚までもが変わっていく……。
言葉とはなにか? そして幸福、自由とはなにか? ムラブリ語研究をとおしてたどり着いた答えとは……?
人間と言葉の新たな可能性を拓く、斬新極まる言語学ノンフィクション。

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タイとラオスの山奥を移動しながら生活するムラブリ。「森の人」という意味とのこと。

労働を搾取されている現代の日本人とは対極的と言いますか、人類の根源たる何かを感じる一冊でした。

ムラブリには文字もなく、数字も10まで数えられない。「数えられない」というと語弊があり、正確に言うとすれば、ムラブリにとっては10まで数えることが生活に必要ない。

老人が一人で薪を運んでいても周りのムラブリは誰も助けない。不親切なわけではなく、いざ助けが必要なら老人が遠慮なく求めるから。

誰かがモノやカネを独占することもない。屠殺した豚は、村のみんなに行き渡るようにシェアリングする。

全ては「そいつ次第」。結婚しようが離婚しようが、重婚しようが「そいつ次第」。殺人を犯したムラブリが村に戻ってきても「そいつ次第」と言い、拒んだりはしない。

人類史の本に出てくる狩猟採集社会、所有や定住の概念が生まれる前、モースの言う「贈与」の民が、現在の世界を、我々と同じ時代に生きて、生活を送っていると思うと純粋に面白い。(ムラブリに時間の概念は無いようだが・・・。)

筆者が後半で書いていたように、なぜこんなにストレスを感じながら労働しているのか、労働の対価として貰っている賃金って何なのか・・・。

自分の中で常識となっている価値観・ライフスタイルを一歩引いて考える機会になります。一種の「脱構築」でしょうか。

大阪万博のテーマ「人類の進歩と調和」は、現代人の自作自演ではないか!!とか頭を過ったところで終わりにします。

素人が言語学を起点に少数民族に触れることができる一冊ですし、勝手なことを言うと、ただ単に現代社会に疲れている人にも何となくオススメできます。

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