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男は結局、フィスラーなんや

【男は結局、フィスラーなんや】

もう10年、になりますか

老舗デパートのキッチン用品売り場で
長年、鍋を売りまくった
伝説のおばちゃんと
仲よくしてもらってるんです

おばちゃんは
その類まれな千里眼と
何でも使いこなすテクニックで

客のニーズを
ガッチリ掴んで離さなかったのでした

いつも売り上げは1番
リピート率、驚異の9割越え
おばちゃんの接客じゃないと
ダメなんだ客が
毎日押し寄せるようになったのです

おばちゃんが鍋を使って
パンを焼いた日には

◯市の副市長の娘が
他のパン屋のパンを
食べられなくなってしまって

朝ごはんが困っている!と

副市長の奥様から直々に
クレームが入ってしまうのです

図にのるな
朝飯のパン、どこで買えばいいんだ
責任とってくれ
旦那に言って、地獄に堕としてやる

おばちゃんは
善意でパンを焼いたのに

いや、パンだけじゃない
いつもいつもそうだった

これまで言われた
言いがかりは五万とある

定食屋殺しなんかはもちろん

発酵食品屋殺し
おむすび屋殺し
魚の一夜干し屋殺し

その他、たいていのレストランが
マズくて食ってられるかレベルの
ご飯を作ってしまい

ただ作っただけなのに
嫌がらせだ、自慢しにきたのか
と、最後には忌嫌われてしまうのだ

そんなおばちゃんは
もうこの社会に期待などしていない

マズいものを高く売って
地獄に堕ちればいい

家族が喜ぶ
ご飯だけを作ればいい

裏切られるたびに
そうやって自分の殻に
閉じこもっていったのでした

そんなおばちゃんが
我が家に何度か遊びにきてくれたことがあって

キッチン用品のことで
教えてくれたことがありました

男はね、結局
フィスラーを選ぶのよ

男は、結局フィスラーを選ぶ?

フィスラーとは
有名な鍋のブランドです

あの時、俺はフライパンと鍋を
総入れ替えしたくて
色々悩んでいたのでした

おばちゃんはそんな俺に
ビタクラフトをすすめてくれて

俺みたいなヒヨッコには
足りない技術を補ってくれる
ビタクラフトのソフィアシリーズ

これがピッタリだと知っていたのです

な、な、な
なのに

あんなに尊敬していたおばちゃんの
アドバイスだから
ビタクラフトでいこうと決心した俺

だったのに

よく分からなまま
最終的に
フィスラーを買ってしまったのです

なぜか、分からない

ステンでキラキラ輝く
フィスラーのフライパンや鍋を
買ってしまったのです

散々相談していながら

フィスラーを買ってしまった俺は
おばちゃんに謝罪を兼ねて連絡しました

ごめん、フィスラー買っちゃった

俺の謝罪を聞いたおばちゃんは
しばらく無言の後

男は、フィスラーを買うんだ

その時、ただそう言ったのです

俺のことを思って
こっちだとアドバイスしたのに
結局そこかよ、と絶望したのか

それとも、あぁぁぁ
初めから知っていたさ
男は所詮フィスラーなんだ、と

賢者が若き勇者をみる眼差しで
あきらめに近い
悟りを得た言葉だったのか

男は、フィスラーを買うんだ

この集合意識に抗うこともできず
スーパー台風を見送る鬼術師のように

間違った俺の選択を

いんや
フィスラーでいいんだ

いんや
フィスラーでいいんだ

い、ん、や
フィスラーで、いいんだ

と、包み込んでくれたのでした

男は、結局
フィスラーを買うんだ

あれから4年
今日、ビタクラフトのフライパンを買った俺

おばちゃん
俺、ビタクラフト
そう、ビタクラフト
やっと、ビタクラフトにしたんよ
おばちゃん
男が、ビタクラフト買ったんや

おばちゃん:
おおおお、そうか
ビタクラフト買ったんか

なら、あのフィスラー

、、、オレにくれ

オレにくれ

オレにくれ

オレに、くれ?

お、お、おばちゃん
そこが狙いだったのか

(笑)

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